傘木希美考察~吹部復帰まで~

リズと青い鳥を見たりや原作を読んだ人の感想として、「傘木そういうとこやぞ」から「なに考えてるかわからねー」、はたまた「傘木希美の感情を考えると死んだ」、しまいには「この世界ちゃんと傘木希美愛してる?大丈夫?」といった様々なものがあがっています。

本稿はいわゆる「傘木希美の感情を考えると死んだ」系のものです。脳内で悶々とするより文章にしたほうが落ち着くのではとまとめようとしてたのですが、気持ち悪いくらい長くなったのでとりあえず復帰までです(→北宇治3年編等追加済)。

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特に退部関係はTV版よりも原作の方が自然に感じたので、原作で描かれた背景を考慮しつつ、時系列的に傘木希美の行動と感情、その理由についてのあくまで1つの考察をしています。

 

 

 傘木希美とは

  • 好きなもの:納豆、オクラ、山芋
  • 嫌いなもの:カニカマ、はんぺん

という原作公式HPの紹介はともかくとして、傘木希美を考える上で”希美は音楽が大好き”であるということはとても重要なポイントだと思います。そして希美の言動は、音楽が優先順位の1番目にあることから発せられていると思える部分も多いです。

また、久美子が抱いた以下の感想も、希美の性格を端的に表していると感じます。

たくましい二本の足が、自分の最善と信じる道を切り開く。傘木希美とは、初めからそういう人間だった。(第二楽章後編p.207)

 

1年生:入学~元南中大量退部事件

南中卒業~北宇治高校入学

南中は久美子出身の北中と同様に全国経験はないものの京都では有名な強豪であり、希美の世代も中1で関西ダメ金、中2で関西銀と順調な成績を残しています。しかし、希美が部長であった中3ではまさかの京都府大会銀と、関西に進めずに終わります。

2年で関西銀で終わったのは前年金の慢心からと、3年では部員全員が一丸となり全国を目指して練習に励み、完璧な仕上げをしたにもかかわらず原因不明の早期敗退*1と、希美の描かれ方は出だしからハードモードです。

しかしこのショックからは北宇治入学時に既に立ち直っており、京都の高校で全国は現実的でない*2にしても、うちらが弱小北宇治を変えてやる!との意気込みで吹部に入ります。全国に行く憧れはあれども、やる気のある仲間との結果なら銀でも銅でも最終的には納得するというスタイルでもあるため*3、北宇治が弱小でも進学先としては構わなかったのでしょう。

このように前向きに入部した希美たち元南中一行ですが、彼女らの理解を越えた顧問・先輩の存在にぶち当たります。

 

退部に至る状況

これはTV版と原作で受ける印象がかなり違います。TV版では主語が希美で「優子は声かけてみたんだけど」「みぞれは声かけなかった」となっています(説明を単純にするため?尺の問題?)。しかしこれだと希美が1人だけで部に戻ってくるのは不自然です。原作の方が詳しく書かれており自然な流れと思いますのでそちらを参考にします。

原作では”元南中のメンバーが退部を決意し、希美や優子を誘った(なお、みぞれは誘われなかった)”ということが詳述されています。この元南中達が退部を決意した理由も、”自分達がコンクールメンバーに選ばれなかったから”ではありません。”練習を真面目にやっていて演奏技術も3年より上の2年生(香織、晴香)が選ばれなかった”からであり、練習もしない3年がAに選ばれる理不尽への抗議に対する3年からの意見、「この部活は元々上を目指していない、部内の秩序を乱しているのは1年でみんな迷惑に思っている」に対し、部内から反論がなかったことが最大の理由です。この3年の意見に反論がないということは、顧問が変わるミラクルでもない限り今後のコンクールも絶望を意味します(合奏は1人でもやる気のない年功序列メンバーがいると即破綻)。

改めて元南中大量退部の状況をまとめると以下となります。

  • 真面目に練習をしたいと何度訴えても却下された
  • パートによっては露骨に無視のようないじめに近い状況(フルートがその代表)
  • 自分達だけではなく、真面目で演奏能力の高い2年生までコンクールメンバーに選ばれなかった
  • 3年の「迷惑をかけているのはあんたら」という意見に反論がないことから、3年卒業後もまともな部活が出来ないことが確定した

あすかは1年のときに香織との会話の中で、当時の2年(希美入部時の3年)へ以下のような評価をしています。元南中メンバーとぶつかった先輩は、希美達の入学前から既に問題児であったことが伺えます。

「来年、もっとひどくなるって可能性はある。いまの2年生はとがった無能ばっかやし」

「ああいうさ、他人を虐げることでしか自分の存在価値を感じられへん人たちってなんで発生するんやろうね。ほんま、脳みそ空っぽで可哀想」(短編集2巻p.46)

また、原作1巻では2年(あすか世代)の1年(希美世代)に対する態度がどのようであったのかを斉藤葵の台詞から推測することが出来ます。これによると1年を気にかけていた晴香達が少数派であり、3年よりの態度が大勢であったようです。葵ちゃんの自分の醜い部分から目を反らしたくないという性格は希美に共通する部分があるかもしれませんね。

「晴香だって、去年のこと覚えてるんやろ?」

「なのに、のうのうと全国目指すやなんて、私には言えへん。なんでみんな平気なん?私にはわからへん。去年あんなにあの子らのことを責めていたくせに

「私はもう無理。耐えられへん。一生懸命頑張りますなんて、私には言う権利ない」(1巻p.154)

 

みぞれを誘わなかった理由 

誘わなかった最大の理由は原作・TV版で希美が自ら語っている通り、みぞれが頑張っていたからです。しかし、退部状況を考えると、そもそも部に残留する同級生に自らの口で退部を伝えること自体がかなりの自傷行為です。

まず、希美は南中で部長をしており、夏紀に熱血ちゃんといわれるほど真面目に取り組んでいました(北宇治3年での京都大会出発時には、元南中の後輩1年から「希美部長のソロ楽しみにしています」と言われるくらいに部長として慕われていたことが伺えます、第二楽章後編p.40)。すなわち、元南中のまとめ役を担う立場です。

そのために自ら上級生に対して意見に動き、部を変えようと人一倍努力していました。しかし結果は仲間の堪忍袋の尾が切れてしまっての大量退部です。自らが下した決断で仲間を導いた事態ではなく、まとめ役である希美のハンドリングがもはや効かない事態の発生、そして退部すなわち1年側の敗北という最悪の結末となります。元部長としての責務を自覚していた希美からすると完全なる失敗体験であり、心がやられる事項です。そして、「こんなとこにいて、いったいなんになんの?上手くなれる?」と逆に諭されることで希美自身も退部に至ります(2巻p.150)。

さらに、退部メンバーはまとめて軽音部に移籍し新たなグループで再出発をきった一方、希美は吹奏楽自体は続けており、退部期間中は誰とも行動をともにせず社会人吹奏楽団に所属しています(2巻p.151)。つまり誘いを断って単独で動くことを選択したのであり、みぞれを誘う誘わないという問題以前に、”誰も誘わない”選択をしたのです。

もちろん、退部を伝えるくらいはするべきではないかと言う意見もあるかと思います。しかし、上記のように退部は積極的に話したくはない苦い失敗体験であることや、希美が退部を誘われたときに優子も同席してたため*4自らの口で伝えずとも部に残留する優子が希美たちの退部を伝えてくれると考えるのは自然なことです。そして、もし希美たちの退部に思うことがある人は逆に聞きに来るとも考えていたのではないでしょうかこの行動を起こしたのがあすか先輩で、これであすかは希美にとって特別な存在になりました)。

希美はその後みぞれと会わずとも問題なく過ごしており、原作中で何度も久美子が感じているように、この時期の希美→みぞれは完全に友達のうちの1人という認識であったと思われます。すなわち、わざとみぞれに伝えなかったのではなく”特別に自ら退部を伝えないといけない濃密な関係ではなかった”という単純な理由であったと推測されます。逆に、みぞれはここで動くことがなかったため、ただの友達を脱して希美の特別となるチャンスを自分で捨てたとも言えます。特別になるためには待っているだけではダメなのです(この点、香織先輩のあすかに対する行動力は凄まじいです)。

  • 希美は退部を誘う側ではなく誘われた側
  • さらに希美は退部メンバーからの軽音部移籍への誘いを断って別行動しており、誰かを誘うではなく誰も誘っていないのが実情 
  • 希美はフルートパートの問題児扱いでいじめに近い無視を受けているが、みぞれはそのような状況ではなく退部を勧める理由もない 
  • 優子が退部を誘われたときに同席しており、希美が退部することは部に残る優子を通じて皆に伝わる 
  • みぞれは当時の希美にとって友人の1人であり特別に自ら伝えないといけない関係ではなかった
  • また、みぞれも部内問題に対し相談相手になったり退部を引き止めたりすることはせず、希美の特別となるための行動自体を起こさなかった

なお、TV版では南中敗退時のバスで希美がみぞれに「高校に入ったら金取ろうね」と約束する場面がありますが、原作ではその会話はありません

また、バスの座席位置も原作では希美が窓側なのに対してTV版ではみぞれが窓側となっており*5原作とTV版における2人の関係、特に希美からみぞれに対する熱量の違いが伺えます

 

負の感情の有無

リズと青い鳥にも繋がるキーワード”嫉妬”ですが、どの時点からそれがあったかというのは大きな議論であり結論が出るものではないでしょう。そもそも嫉妬と賞賛は一体であり、相手に対して思うところがなければ素直な賞賛、なにかしら負の感情が芽生えてしまえばそれが裏返り嫉妬となります(意味的には嫉妬より羨望が正しい?)。

おそらく退部した1年の時点では、みぞれの演奏に対する感情は素直な賞賛であったと思われます。希美とみぞれは競争相手ではなく、上手い部活仲間は頼もしい味方です。この賞賛が裏返り始めるのは、自由曲がリズと青い鳥に決まるのを待つことになります。これについては3年生の項で詳述します。

 

元南中メンバー

希美個人がこの時点で賞賛の側であっても元南中全員がそうかは不明です。退部主導メンバーが誰一人みぞれに声をかけなかったのは、久美子が推測したようにみぞれだけがAに入った嫉妬も理由の1つである可能性は大いにありえます。

とはいえ、みぞれは上級生からの嫌がらせを受けず黙々と練習しており、部のごたごたにも我関せずであったのであれば、声をかける理由も特になくなってしまうので原因ははっきりとしません。

夏紀の過去語りでも夏紀自身も退部を誘われたという口調では話していないので、現在の部で良しとしている(もしくはそのように見える)部員には声をかけないというだけだったのかもしれません。

短編集などで元南中退部メンバーの描写もぜひ読みたいですね。

 

田中あすか

あすか先輩は退部時の行動で希美にとっての特別な存在になりました。当時のあすかに部を変える意思はないので、希美が戻ってきたくなるという予言は顧問交代の結果オーライであり、いくら聡明とはいえあまりにも未来視ですが、言動的には希美のツボを押さえまくっています。さすがあすか先輩です

  • 退部を引き止めに来た=希美のことを考えた行動
  • 3年が嫌いだとはっきりと口に出して伝えた=反3年の立場表明
  • 希美が吹奏楽を好きなことを見抜いていた=”音楽”的理解
  • 予言が当たった(完全に偶然とはいえ)

あすかが退部を引き止めようとしたのは上手い部員がいることは損じゃないというある意味打算ですが、引き止められる側にはとても嬉しいことです(しかも引き止めに来たのは希美だけという特別扱い)。また、当時の2年は3年に同調するか3年を恐れて従うばかりだった中で、私は1年の意見に賛同しているという姿勢を毅然と示したわけです。さらに音楽・吹奏楽が大好きだという希美の本質を理解した上での説得、これは心惹かれます。その上で予言的中、数え役満以外の何物でもありません。

 

2年生:吹奏楽部復帰

退部のトラウマ

上述のように希美にとって元南中の大量退部は大きな失敗体験です。さらに、顧問交代で北宇治吹部が一変し、残った人間こそが正解のようになってしまいました。

実際には顧問が交代するなど誰にも分かるものでもなく、滝先生が来なければ合奏をやりたい人間にとっては退部が正解であり後悔する必要など全くなかったでしょう。元南中大量退部は失敗事項であるものの最終的に退部を決め社会人楽団へ入ったのは、上手くなるための環境を求めての音楽に対する前向きで真摯な選択だったからです。自身の最善と信じる道を切り開いたわけです。

ところがこの選択が滝先生就任で裏目に出ます。この不運で希美は自身の音楽に対する姿勢への自信が揺らいだかもしれません*6。さらに、退部を選択した自分が悪いと自罰的に考えているとも思われます。リズで退部の話をするときに言いわけじみた口調になっているのはその表れとも言えます。

希美に厳しい世界といわれる一端がこの退部問題です

 

復帰の決意

あすか先輩の予言は顧問交代がなければ大外れでしたが、そこはあすか先輩なので的中します。希美は仲間の誘いを断り単独行動となってでも吹奏楽を続けるくらいに吹奏楽が大好きです、吹部がまともになれば戻りたいと思うのも当然です。元々はそういう部活をやりたかったわけなのですから。

とはいえここで本当に復帰する(それも1人で)というのはとても勇気がいること。普通の人間ならプライドが邪魔をして戻ろうとはしないのではないでしょうか。そして吹部のことは頭から消し去って終わりにすると思います。それでも復部したのは吹奏楽に対する強い思い入れと、そして希美自身も言っているように特別なあすか先輩の手伝いをしたいという思いがあったからでしょう。希美の音楽優先主義の一面がここに表れています。この感情に関しては原作2巻p.156-158での希美の台詞が全てを表しているので是非とも読んでもらいたいところです。

しかしそのあすか先輩から復帰を却下される、しかも理由は教えてもらえずに。更なる人生ハードモードの始まりです。

 

あすか先輩による復帰拒否

これに関するあすか先輩の対応は実にらしくないです。復帰を認めず部活でののぞみぞ接触を絶っても、その他の接触は全く防げません。同学年で同フロア、校内行事にしろ廊下でのすれ違いにしろ機会はいくらでもあります(さらにみぞれは廊下で練習、そして実際に接触)。

いくらみぞれから希美に会うのが怖いと相談を受けていたとはいえ、こんなことは本来のあすか先輩なら瞬時に考えが回るはずです。後に自身でこの騒動の時は自分の都合しか考えていなかったと反省しているように(3巻p.236)、視野が狭くなっていて判断力も鈍っていたのでしょう。下策ではないが上策でもない問題先送りの凡人的対応をした感があります

 

南中カルテットの立場

読者視聴者の視点は最も発言力が大きく意見がはっきりしている優子に引っ張られることになります。しかし、優子視点はあくまで1つの視点に過ぎず、違う立場で見るとかなり様相が異なります。

 

吉川優子

優子はみぞれから相談を受けている数少ない人物です。それゆえ、みぞれが苦しんでいることおよびその理由を知っています。さらに優子はみぞれを助けてやらねばならない存在と認識しています(短編2巻p.291)。よって、優子視点では、みぞれが希美のことを考えて苦しんでいる、すなわち希美が強い存在でみぞれを振り回す立場です。希美がみぞれに対してアクションを起こすのが当然となります。 

中川夏紀

一方の夏紀はみぞれから相談を受けていません。よってみぞれが苦しんでいること自体を知りません。部活のみならずクラスで顔を合わせている同級生、そして夏紀のように気配り全一の人間でも、話すなり行動を起こすなりの何らかのアクションがないと気付けないものは気付けないのです

優子は上記の立場であるため、希美に対して「何かしたから怒ってるんとちゃう、なんもせえへんかったから怒ってるんや!」と言いますが、実際にはみぞれの方も何かしてもらうための気付きを与える行動をしていません。

さらに、夏紀は南中退部騒動のときに遠くから見ていただけで何もできなかったことを後悔しています(2巻p.233)。すなわち、退部問題で行動しなかったのは当時相談に乗ったり協力することが出来なかった側という認識です。

このため、先の優子の台詞に対しては「はあ?何、意味わからん事言うてんの」となります。 

鎧塚みぞれ

自分が希美の特別になるための行動をしていないことをみぞれ自身も薄々認識していると思われる節があり、あすか先輩への相談でも「あの子(希美)は何も悪くない」と話しています(2巻p.193)。

後の話になりますが、3年進級後の大好きのハグに関する台詞でもこれを示唆する台詞があります。そして、ついにみぞれが自分から行動するというのが第二楽章後編およびリズになります

私、誘われるのを待ってばっかりだった。いつもそう。見てるだけ

「もし、あのとき、自分の気持ちを伝えてたら。たまに、そう思う。何かが、変わっていたのかも」(第二楽章後編p.253-254)

傘木希美

実は希美が一番みぞれを理解できない立場にいるのではないかと思います。希美としてはみぞれを吹部に誘っただけであり、特別なことをした意識は全くありません。逆に言えば、特別なことをしていないのでみぞれから特別に思われる理由がありません。

しかし、みぞれにとってはそのこと自体が特別であったため、いきなりみぞれ側の壁が取っ払われます。すなわち、他の部員と違って希美にはみぞれと仲良くなる過程がありません。このため、みぞれがどういう人間かを知ることがなく”友達”になりました

また、みぞれは直接的に希美に思いをぶつけることがなく、希美との距離を縮めるチャンスも見ているだけでスルーしています。普段の態度から嫌われていることはないだろうけれども、近づいてくることもないため、”仲がいいとは思うが不思議な子”というリズで梨々花に対して述べた感想がまさにそのものになるのではないでしょうか*7

リズでもみぞれとの会話はキャッチボールというより微妙にずれており、一方的に希美がしゃべり続ける形になっています。これは、みぞれのことがよく分からないがゆえに会話が続いていないと不安になる、といったことの表れでないかと思います*8

 

復帰騒動~正式復帰

復帰の申し出は尊敬するあすか先輩によってにべもなく却下されます。しかも理由は教えてもらえずに。しかしそこで自暴自棄になることはなく、あすか先輩がそういうのであれば自分の復帰が何かマイナスになることがあるのだろうと冷静に受け止める落ち着きと理性を持っています。ただ、実際の理由は希美に悪い部分があったわけでもないため、何故復帰が認められないのかの戸惑いはかなりのものであったと思われます。

そうこうするうちに関西大会も近くなり、みぞれがソロで悩んでいる噂を聞いて相談に乗ろうと動きます。これは希美が悩んでいるときにみぞれが動かなかったことを考えるとかなり対照的です。また、このように相談に乗ろうとすること自体、この時点の希美はみぞれに対する負の感情がなかったことも伺えます*9。和解の場面でも純粋にみぞれのオーボエを称賛しています。

「わたしがさ、あの子の力になれたらええんやけど」

希美はそう言って目を伏せる。その声はどこまでも純粋で、彼女の心根の優しさを久美子は直視するハメになる。(2巻p.246-247)

 

結局は2人が接触することでこの問題は解決に至ります。これで一件落着良かったね、とならないのがユーフォの恐ろしくも凄いところです。互いに対する思いの熱量の差、すれ違いは継続しており、ここに進路問題等が絡んでリズと青い鳥へと続きます。

追加戦士である希美の見せ場が来年あるのは間違いないという単純な予想を軽く超え、さらなる試練が訪れるのです。

 

リズと青い鳥にたどり着く前にやたらと長い前提を経ましたが、まだ希美とみぞれは本当の意味では出会っていない状態です。希美もみぞれもお互いにお互いをキチンと見ていません。

希美とみぞれの本当の意味での出会いがリズと青い鳥になるのではないでしょうか

 

 

*1:優子は納得がいっていないものの、コンクール向きの演奏ではなかったのではないかと推測して折り合いをつけている(2巻p.213-215)。ホントの話で追加されたあすか先輩の吉川優子評、”トップ以外の場所に立つと無自覚な部活クラッシャーになる(短編2巻p.98)”は考えだすと収拾が付かなくなるのでスルー

*2:高校では大阪3強が圧倒していたため。久美子1年での全国も3強の一角のソリストが骨折&代理がミスでようやくという厳しい世界

*3:北宇治1年のコンクールに対して「やる気のある奴だけ集めて大会に挑んでたら、それで結果が銀でも銅でも納得できたはず」という台詞がある、2巻p.147

*4:久美子に優子たちが部に残った理由を聞かれたときに「優子は誘われたとき、もう少し続けて見るって言ってた」と答えているため、希美と優子は元南中メンバーに同時に退部を誘われているものと推測できます、2巻p.151

*5:希美の席にみぞれが座りに来たか、みぞれの席に希美が座りに来たかの違い

*6:久美子にフルートが好きなんですねと言われたとき、不自然な返しになったのもこの影響と推測される(2巻p.110)

*7:原作では梨々花の相談相手は久美子であり、久美子の経験談から適切なアドバイスがなされている。一方、希美にはみぞれとの仲良くなるための過程が存在しないため、経験談ができない

*8:コンクール後の描写で、会話が途切れても問題なくなったことがわざわざ描かれていることからも推測されます、短編2巻p.18-19

*9:なお、希美は本心を隠すことがありますが、隠しているときは久美子にバレバレです