剣崎梨々花のりりりんポイント

リズと青い鳥、早くも1周年経過ですね~。初見を傘木希美視点で見たことからドハマりしたわけですが、この映画でやられた!と思ったキャラクターは剣崎梨々花。最終楽章前編時点までの描写に基づいて一押ししたいという記事です。

晴香あすか世代および南中カルテット世代が去って始まる久美子3年生編。特に南中カルテットのキャラが濃かっただけに、いなくなった後どうなるんだろうと不安もありました。でも大丈夫。誓いのフィナーレで準主役とも言える活躍を見せた奏を含め、W鈴木に月永求と梨々花世代にも魅力的なキャラクターが勢揃いしてます。

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剣崎梨々花とは

まずは宝島社公式のプロフィールを。嫌いなもの「ないしょ」で早くも強キャラ感があふれ出ています。リズにおける梨々花の第一印象は大きい!でした。「まるでダブル ルー・リードだよー*1」の台詞で歩いてくる場面、兜谷・籠手山ペアとの身長差はかなりのインパクト。

そう、梨々花の身長は163cmと久美子162cmより既に高い。あすか香織晴香の165オーバー組が卒業し、小ぶりな南中カルテットが最上級生となった中ではかなりのサイズ感。可愛らしいふわふわな外見、喋り方と身長のギャップは梨々花の魅力

大きいけど可愛い、大きいけどふわふわ、まるで大型犬のような安心感サファイア川島による動物判定を是非とも聞いてみたいところ*2

 

剣崎梨々花の演奏力

残念ながら1年ではAから落ちてしまったとはいえ、鎧塚みぞれをもってしてなかなかに優秀と認められています(第二楽章前編p.385)。最終楽章前編では1年奏者に対する梨々花評を久美子が信頼している描写があります(p.137)。これも梨々花自身の演奏に対する評価があってこそでしょう*3

1年ではBだった梨々花が2年でダブルリードのパートリーダーに選ばれたというのも確かな演奏技術があることの裏付けと思われます。なにせファゴットの2人*4は1年からA入りしているんですから。アンコンでの編成一番乗りも周りに認められているからこそ出来たことですよね*5

1年で梨々花がAに入れなかったのはもう1人のオーボエがみぞれだったことも大きいかもしれません。みぞれ1人でも必要なオーボエの音は確保できるから他のパートの厚みを増したい、みぞれが飛び抜けすぎていて2人だと違和感が出る等々。

 

剣崎梨々花の向上心

ここから本題です。剣崎梨々花推しポイントの1つはその向上心。プロフィールの趣味にも「興味があるものは片っ端からやる」とあるように行動力抜群。先に述べたとおりアンコン編では一番乗りで木管五重奏を編成しています*6

一例が鎧塚先輩と仲良くなりたい、ならばどうすればいいかからの行動。行動し、実行するために必要なのはなによりもまずは自分の気持ち。こうなりたいと思うことに対する瞬発力。リズでのみぞれと仲良くなる過程はまさに梨々花の心の強さの表れかなと。

また、ホントの話「上質な休日の過ごし方」で示される梨々花のポジティブマインド。自分で自分の気分を盛り上げる方法も知っています。やるからには楽しく、そして楽しくやるからこそ継続する。向上心と自尊心を意識的かつ健全にリンクさせていることにも、こやつ…出来る!感を与えられます。

久石奏をして梨々花と遊ぶときは普段よりお洒落に気を遣うというのは、梨々花が常に上を目指していることと無関係ではないでしょう。美玲の久美子への警戒心も、梨々花が久美子に感謝していたという言葉で氷解します(第二楽章前編p.192-193)。あの時期の美玲にそれほど認められていたというのは本当に凄いこと。

どうせ作るなら、自分のテンションが上がるようのものがいいやん。呼び方ひとつで幸せになれるなら、おしゃれな呼び方にしたほうが人生お得でしょ?(短編2巻p.73-74)

あと、梨々花は大切なことを簡単に言葉にできるんですよね*7。普段から奏と冗談ともつかない歯の浮くようなやりとりをしているのが実は役に立っているのかもしれません。最終楽章前編のこの台詞見たらもう全力応援しかないでしょう?

「アンコンといえば梨々花ちゃん、パートリーダーとして頑張ってましたよ。アンコンのチーム申請だって、一番乗りだったし」
「……ならよかった」みぞれの口元がそっと綻ぶ(短編2巻p.189)

「みぞれ先輩に託されましたからねー。頑張らないとって思ってるんです」(最終楽章前編p.218) 

 

剣崎梨々花の判断力

剣崎梨々花の最推しポイント。梨々花は状況、場面に応じた行動をキチンと選択できます。自分を出していい場面と引くべき場面をしっかりと把握しています。奏のツンデレeyeを通すとこんな表現に。

彼女は自分が魅力のある人間だと自覚しているし、どうすれば上手く相手の懐に潜り込めるかを冷静に計算している。一見無茶苦茶な、しかしその実したたかな行動は、あふれんばかりの愛嬌でコーティングされているため無邪気さゆえのものだと思われがちだ(短編2巻p.72)

純粋、正直である、無邪気であることは確かに1つの長所です。しかし、実生活でそれを前面に押し出すことが美徳となるかは別の話。むしろ相手のことを考えていない欠点ともなり得ます*8。梨々花はそれを理解したうえで、無邪気さを前に出していい場面では徹底的に全力。

「こっちは真剣なんですよー。めちゃくちゃに深刻な問題なんです。私らにとって、鎧塚先輩は唯一の先輩なんです。オーボエ上手い! 練習熱心! 欠点は何ひとつないんですよ。でも、私らに優しくしてくれなーい!」(第二楽章前編p.148)

「みぞ先輩、きれいですね! これ! 白いやつしか売ってなくないですか? いーなーっ」「へぇー。やっぱ仲良しですねぇー。いーなぁー」
「オーディション落ちちゃいました。先輩と一緒にコンクール出たかったですー !」(リズと青い鳥

梨々花の発揮する無邪気さは相手を傷つけるものではなく、人の心を温かくする。だからこそ懐へ入り込むことが出来るんだと思います。そしてこの計算は脳内でロジックを積み上げたものではなく、本能的に分かっている”んじゃないかなと*9。「計画通り!」と暗黒の笑みを浮かべる梨々花も面白いけど、やっぱりそれは違う気もしますので。

この愛嬌マシーンの一方で、久美子にもらったアドバイスに対して謝意を述べる場面ではすっと真剣な面持ちに切り替わります(第二楽章前編p.299-302)。真面目にすべき場面ではしっかりと真面目になれる。特に感謝を伝えるとき、どれだけ本気で言えるかは物凄く重要。人間として信用できます。

さらには返す刀で黄前相談所に取り次いでもらったお礼とばかりに奏と夏紀を取り持つための探りを。これは奏がまだ受け入れられる状態ではなく失敗に終わるものの、本当によく人を見ています。また、感触的に時期じゃないとみるや深入りせずに撤退。拗らせて逆効果となる手前で踏みとどまります。なんでも真正面からぶつければいいわけでないと知っており、引きどころも心得ているのは今後の北宇治にとって心強い

正論でぐいぐいは決して間違いではないけれども、正解でもない。こういう人間の機微を最終楽章の麗奈で表現したのは面白いなと思いました。

高坂先輩って怒るとき怖いじゃないですか。私、自分が叱られるのは全然平気なんですけど、人が叱られてるのを見るのが苦手で。特に、佳穂が怒られてると、なんか息が苦しくなるんですーーーあの人は、正しさの塊みたい(最終楽章前編p.212)

この機微を考えた計算、あすかはその超高性能コンピュータで瞬時に、部長の久美子は考えた上で*10導き出しています。

集団をまとめるうえでの必須能力。梨々花を1年生指導係に任命した久美子たちは良く見ているなと思いつつ、必然であるとも思います

キングダム*11風に言うと知略型の頂点があすかなら、その対極の本能型が梨々花なんじゃないかなと。久美子は元々は本能型だったのが今は知略よりにシフトしてきている感じ。色々考えすぎている久美子が最終楽章後編でどう吹っ切れるか。ここ凄い楽しみにしています

知能本能がおおざっぱすぎるとすると、あすかは頭で組み立てて身体で演じられるタイプ*12。脳の回転が超速なので思考タイムラグがほぼない。奏も頭で組み立てるけれども身体がついてきていないタイプ*13。梨々花は身体で反応して理由を言語化できるタイプ*14。かなり独断と偏見混じりですがこんな感じでしょうか。

 

可愛い梨々花は爪を隠す

はっきり言って梨々花は目立ちます。スクールカースト上位の学年中心存在で先輩からの覚えも良い。このようなキャラクターは憧れられると同時に、僻みの対象にもなりかねない存在です。しかし梨々花の場合はまさに奏の言の通り”あふれんばかりの愛嬌”でコーティングしているため、悪意を向けられにくいんじゃないかなと思います。

特に奏とのやり取りが象徴的で、梨々花は大抵の場面で奏に大げさなちょっかいを出してあしらわれる側。愛嬌のあるピエロはどうしても憎めません。実力制で格段に厳しくなった北宇治吹部において一番扱いが難しい初心者1年を”可愛いは正義”で虜にした*15のは、可愛さ+親しみやすさ=愛嬌の方程式を成立させているからでしょう。改めてプロフィールを振り返ると特技は「友達作り」、完全に納得です

で、このピエロ的ともいえる敵を作らない愛嬌が意図的な計算か?と言われるとそうではなく、単に好きでやっているだけのような気が。ここらも本能タイプのなせるわざかもしれません。

 

リリカチャンステキスギ!

個人の凄さを可愛さ、愛嬌で覆い隠している存在として真っ先に挙げられるのは川島緑輝梨々花にもこの系譜に連なる強キャラの匂いが大いに漂います。小さい緑輝と大きな梨々花。可愛いが大好きな2人の可愛い談義をぜひ眺めてみたいもの。この2人、絶対に話が合いますよね。また、緑輝が可愛いと言ってやまない葉月は同じ1年指導係ですし、3人行動もありえそうです*16

ということで剣崎梨々花について推したいと思うりりりんポイントを挙げてみました。ふわふわな雰囲気を持ちながら大きい。ぽやっとしているように見えて意外と聡明*17。そして要所ではしっかりと真剣になれる。梨々花の魅力と言えばやはりそのギャップ

自他ともに認める*18次代を担う実力者。残るは後編のみとなった本編でも更なる活躍を期待します。

ちなみにこの小見出しはホントの話「上質な休日の過ごし方」における奏との掛け合いからの一節(短編2巻p.74)。なんとなく端的に梨々花の愛嬌を表しているんじゃないかなと。肩ひじ張らない強さ、周囲を明るくする幸福感があります。

リリカチャンステキスギ!

 

おまけ 

誓いのフィナーレと最終楽章前編の感想を少しだけ。特に最終楽章へ向けて思うことは前の記事に書いたので本当にさっとです。

 

久石奏

不器用なキャラクターは大好物です。誓いのフィナーレ、奏が動いてましたよ! それだけで大満足ですね。久美子と奏の物語としての側面が大きくなり、なつかな要素が減ってしまったのがやや残念ではありますが奏の魅力は十二分に伝わったかと。

そして最終楽章前編。君さー、久美子先輩のこと好きすぎちゃう? ほんとこれどうなるんでしょう。第二楽章から久石奏というキャラクターを綿密に積み上げてきたんだなという感じが凄いです。

かつての自分のトラウマと行動、そして今は大好きな久美子先輩。武田先生も奏を動かすことをとても楽しんでいるんじゃないでしょうか。あすか先輩ノート(および響け!ユーフォニアム)が久美子から引き継がれるのかも含めて目が離せません。

 

鈴木美玲

誓いのフィナーレで一番ぐっときたところは、みっちゃんの「来年は、一緒に吹きましょう!」でした。あれはずるいよ、絶対泣くやつやん・・・。各所で挟んだ葉月の練習カットを見せた上でのこの演出。チューバトリオがますます好きになりました。

葛藤から解放されている最終楽章ではその優秀さが前面に押し出されています。そしてさり気にさつきの演奏を認めているところ、仲良しさんですねー。壁を取り払えて本当に良かった。

さつきがAから落ちたときの行動はかつての自分の反省*19もこめてか冷静。滝先生の方針に公然と疑問を呈することは部のあり方を覆しなにより当人たちの迷惑になるという判断から、久美子にだけ質問を投げかけます。こういう冷静さや指導面の的確さからDMに就任するとピッタリかもしれません*20

 

鈴木さつき

さっちゃんについては最終楽章前編の感想を。子供っぽさを感じさせてきた今までの描写から一転して、中学からの経験者らしいところや強さが描かれています。特にオーディション結果の場面、本来なら大ショックですよ。中学から4年以上やっている経験者が開始数か月の初心者に落とされる。しかも技術は自分の方が上なのに*21

落ち込んでいい場面なのに落ち込まず、頑張ると前向きなのは少し怖さすら感じます。オーディションを大会ごとにやることになって影響があるのは恐らくこのさつきすずめ争いとユーフォソロ。さつきにはまだ3年が残っているとはいえ、誓いのフィナーレを見るとやっぱり葉月とW鈴木が全国で吹けるといいなと思ってしまいます

自分より優れた相手に対して嫉妬心を抱かない性格は、彼女の長所だろうか、それとも短所だろうか(短編2巻p.194)

 

黒江真由

前編を読んだ100人中100人が黒江真由、一体何者なんだと悶々としていることでしょう。当然ながら私もそのうちの1人です。素直に見ればただの音楽好き*22で優しい人間。久美子が思いつめているのは自縄自縛の考えすぎ。トランペットとのソリも含めてこの関係がどう動くのか。これはもう座して待つしかない。

あなたは黒真由ですか? それとも白真由ですか? 

 

 

 

*1:ルー・リードさんに詳しくないため未だに意味はよく理解できていない・・・

*2:なお、奏は梨々花をキツネみたいに思っているかも? 短編2巻p.71

*3:そしてその梨々花評を聞いた義井沙里が喜んでいるのも梨々花を認めているからこそ

*4:原作では1人

*5:こういうのって上手い人から取られていく恐ろしさがあります

*6:声をかけた1年フルートが誰なのかかなり気になります。つみきだったら嬉しい

*7:後述の判断力でのところの引用もこれに当たります

*8:思ったことをなんでも言う、自分のやりたいことだけをやるなど

*9:脳内計算にしては瞬発力がありすぎるという気もするので、身体で分かってるというか

*10:かけるべき言葉、取るべき態度。それを考えたとき、手本として脳裏をよぎるのはやはりあすかの振る舞いだった(最終楽章前編p.218

*11:映画評判いいみたいですね! 特にヒョウ公将軍と壁が好きです

*12:行動は自らの意識下にあるため非情にも悪人になることも拒否反応が出ない

*13:行動を意識で完全に制御できていないため久美子に甘いと言われるし、悪人になりきれない

*14:行動自体が反射的でも何故その行動を起こしたのかは頭で理解できている

*15:最終楽章前編p.308

*16:3人でお出かけすれば葉月が着せ替え人形にされそう

*17:なんたって数学も学年1位(短編2巻p.30)

*18:「久美子先輩って才能がある子が好きですもんね」(最終楽章前編p.218)という言葉を、目をかけられている自らが言うのは強い

*19:サンフェス練習(誓いでは本番前)からの離脱「集団の輪を乱す人間はダメだって、よくわかってたはずなんですけど」(第二楽章前編p.196)

*20:個人的にはDMは夢メンタルが急成長して麗奈のあとを継いでほしかったりもします

*21:そしてその初心者はやったでーと元気に姉へ突撃

*22:むしろ音楽狂気味?