決意の最終楽章~事前予想アーカイブ~
3月ですよ!来月は誓いのフィナーレに決意の最終楽章前編が公開ですよ!!
「チューニングOK、センパイ?」
いえ全く。心の準備が全然できていなくてあわあわしています。ついにユーフォ本編が完結に向かう。向かってしまう。新たな物語を目にするのが楽しみでもあり怖くもある。最後まで見届けられるのが嬉しくもあり寂しくもある*1。
しかし冷静に考えてみればあと1か月あるとも。まだ慌てるような時間じゃない。ということで、現実を受け入れて心を落ち着かせるための整理を。
「響け!ユーフォニアム」のサブタイトルは「北宇治高校吹奏楽部〇〇〇〇」といったように、その巻の内容が端的に表されています。本編だと”ようこそ”→”いちばん熱い夏”→”最大の危機”→”波乱の第二楽章*2”。そして今回が「決意の最終楽章」。
すなわちテーマは”決意”と”最終”。まず決意はなににかかっているのか。そもそも誰の決意なのか、対象はなんなのか。卒業を迎える3年シーズン。主人公の久美子や麗奈は当然として秀一たちを含む全員が、例え劇中で描かれなかったとしてもそれぞれの決意を抱くでしょう。久美子に絞っても全国金への意気込み、麗奈や秀一との関係、自身の進路、後輩へのバトンタッチ等々多数。こう考えると決意がサブタイトルに入るのはとても自然だと感じます。
そして”最終”。ユーフォ本編の完結、高校生活の終わりだけではなく様々な事柄に対する終焉を表しているとすれば少し恐ろしいですね。
事前予想アーカイブ
新作が発刊されると読む前に何を考えていたかを全て忘れてしまうポンコツ脳。さらに武田先生の刊行ペースが物凄いこともあってインプットの処理が追い付かないという嬉しすぎる事態。
それでもポンコツはポンコツなりに考えていたりするので、どういう伏線が張られていたか、展開があると思っていたのかを記録しようと備忘録を。ぶっちゃけ大外れでいいんです。思考回路を振り返れるようにしておくことが重要なんだ精神です。なお、例によってWebで見かけた展開予想とかも参考にさせていただいております。
と、のんびりしていたらあらすじが公開されました。そう来たか!という展開でワクワクが止まりません。そしてやはり予想がスコーンと外れていたりします。それでもせっかく書いたんだから、あらすじを読む前に考えていたものを載せておきます。
全日本吹奏楽コンクール
ユーフォシリーズ当初から目標として掲げられた話の幹となる部分。もちろん最大の焦点は全国金なるか否か。
全国金。それは部員全員の悲願のみならず、久美子が部長としての役目を完遂する瞬間であり、麗奈が特別になるために必要なことであり、滝先生が亡き妻へ贈る愛の形でもあります*3。まさに物語の結末に相応しいハッピーエンド。こんなにも約束された状態で金獲れないことある? ないですね! 確定の赤ランプです。はい次!!
というのはともかくとして、大団円に終わるとしてもそこへたどり着く道のりは一筋縄とはいかないでしょう。かつての南中の場合だと関西金で意図しない緩みがあり(2巻p.12)、関西銀に終わって絞り出した本気が府大会銀という絶望を味わったわけです。そして全国進出→関西ダメ金の北宇治は当時の南中と何気に状況が似ています*4。
すなわち、努力したから願った通りのものが得られるといった単純なものではない。これは武田先生も前々から言っていることなのでどのような結末に終わるとしても見届ける覚悟だけは持っておきます。
部長としての久美子
原作1巻やTV版1期の初期ではガチとエンジョイに分かれていたものの滝先生が上手いこと空気を作り、その後は希美みぞれ・あすか・W鈴木・夏紀奏・夢ちゃんといったように、個人間もしくは個人の問題に焦点が当たっていました。そしてそこに久美子が介在しているという状態です。
しかし久美子は今や部長です。個人やパート内のミクロな問題は各パートリーダーや奏たちに任せ、全体の方向性やパート間の問題といったもっとマクロなものに対応する立場です*5。ではその部長が対応すべきマクロな問題とはなにか。パッと思いつくものは以下などが挙げられます。
滝先生が来て変わった北宇治吹奏楽部。久美子はそれを引き継いでまともな部活運営を行っているでしょう。この吹部の方向性と対立するには確たる理由と大きな発言力が必要となります。黄前相談室で2年最大勢力の梨々花・奏を手懐けていること、その下の新1年が奏たちを差し置いて久美子と対立するのは明らかに役者不足なことから、マクロな問題で相対するのは力のある同級生であると思われます*6。
ここで気になるのは低音パートや麗奈以外の”同級生から見た久美子の評価”。演奏、人格ともにそれなりに認められているのは間違いない。ただ、それが揺るぎないものなのか。あすかや麗奈といった特別な者の隣ではなく、久美子単体としての存在が問われるのではないかと。この年代にとってユーフォと言えばあすか先輩、その絶対的強者と否応なく比較されてしまう。偉大な先輩たちの幻影との戦いになるかもしれません。
久美子と秀一
部の一体感として部長と副部長の連携はとても重要。前年のなかよし川体制はまさに絶妙な噛み合わせで運営されていました。そして秀一。秀一は何気に常識人で周りが見えてる上にめっちゃいい奴。もし部長と方針が異なっても単純に対立とはならず、上手に手綱を引いたりキッチリ話し合って落としどころを見つけてしまいそうです。
原作の描写でも高校男子的なお馬鹿なところを持っていながらものの見方は非常に冷静。希美とみぞれの問題に対して進路は一人ひとり別物で個人の自由と言ったり(第二楽章後編p.94)、アンコンの投票システムでも説明の上でなら部員は納得するはずだしそういう経験は大事と本質を見ています(短編2巻p.187)。すなわち、部員たちを大人として扱い、信頼しています。周りに流されやすく、悪意をぶつけられることにトラウマのある久美子をしっかりと支えてくれるのではないでしょうか。そして久美子は引退時にいかに助けられていたかを認識するがよいのです。
問題が発生するとしたら秀一が優しすぎることに対して久美子が爆発することくらいかなあと。やはり久美子と秀一は部活引退後の再告白に向けた関係性の構築がメインになる気がします。次は久美子から思いを告げてもいいんですよ!?
そして2人がハッピーエンドを迎えるとしてもその進路が気になりますね。そもそも秀一はなぜ北中出身者の少ない北宇治に来たのでしょうか。「お前、北宇治やってんな」(1巻p.26)とか誤魔化してるけど久美子が北宇治行くの絶対知ってたでしょ、キミ。
とはいえ恋人関係になっていれば大学以降は別々の道を選んでも問題なさそうです。久美子と麗奈の仲を尊重しているように拘束するタイプではないこと、前述のような冷静さや大人の視野を持っていること、目的のために恋人を解消しても怒らず待つ忍耐力を備えていることから、超遠距離でもなければ大丈夫という安心感があります。
余談ですがホントの話の梨子が東京へ旅立つ後藤を見送る短編。どの角度から見てもこの恋は永遠なのについているタイトルが「木綿のハンカチ」。やっぱりあの名曲木綿のハンカチーフを意識してますよね。でもこの歌だと恋人は待っているだけなのに対して梨子は「待てなくなったら会いに行く」と言っているので違う結末になることを示唆しているのでしょうか。そうであって欲しいです。
久美子と麗奈
もう1人の主人公であり久美子に次ぐ最重要人物の麗奈。クライマックスの定番としては最強の仲間が最大の敵となるなので久美子・麗奈間に対立が生じる可能性が大いにあり得ます。でもじゃあそれがなにかと言われるとさっぱり分からない。私が思い付けるものは結果主義派と結果だけが全てじゃない派の対立くらいです。この分類なら麗奈は結果主義側になるのでしょうが、その先鋭度合いは前年の関西ダメ金がどの程度影響を与えているのかによるでしょう。
1年のころの麗奈は他人の置かれた環境や全体を見る視野が狭く「出来るまでやればいい、努力が足りないのが悪い」という立場でした*7。一方、2年では実力順で夢をファーストにしても崩壊することや全体を考えての1st,2nd,3rdの役割に言及するような、より高位の視点を身に着けています*8。
わかってるんです、それは。実力順で無理やり小日向さんをファーストにつけたって、きっと上手くいかない。組織のトップとして、優子先輩は正しい判断を下してる。でも、それでもアタシは歯がゆく感じてしまって…。(第二楽章後編p.179)
しかし全体を考えたバランス調整はいつしか妥協となり油断を生んだというのが前部長優子の総括であり、麗奈がもどかしく感じていたことでもあります。すなわち3年で幹部職を背負う麗奈は、前年の反省・反動からまさに鬼のDMとなる可能性が高いです。
ただ、これが久美子との対立要因たりえるかというと疑問符が。全国金への想いを共有する部長と敵対するまでになるなら、ある意味かなりの暴走モード。広い視野を得ている、優子部長に対する敬意もある状態でそこまで先鋭化するのだろうかと。むしろ鬼のDMとそれをフォローする部長副部長といった役割分担、協力体制の方が自然かもしれません。妥協のない演奏、本気のぶつかり合いもテーマの1つであることは間違いないので、どのように描かれるかを楽しみにしたいです。
麗奈に関して少し振り返ってみると、麗奈は神の視点から見れば常に”正しい側”にいます。麗奈の発した言葉は実際に本質をついているといった感じです。
- ソロ騒動:上手いからソロなんですよ
- 第二楽章:みぞれがブレーキをかけている、希美の嫉妬
- サード夢:今の北宇治は妥協の積み重なり
より正しいもの強いもの、もしくは逆に理不尽なものにやりこめられるといった描写はなく、だからこそ特別な存在を維持し続けています。あすか先輩のように特別でありながら特別でないところが明らかになっていくのか、一直線に特別の高みを目指す姿が描かれるのか。高坂麗奈というキャラクターをどこに置くかで全てが変わるのでどの路線で行くかは大変興味深いところ。
そしてその進路。滝先生の出身音大に行くのか海外留学するのか。麗奈の進路は間違いなく久美子の進む道の決断に関わってきます。そもそもLikeではなくLoveな滝先生との関係は最終的にどうなるのか。麗奈は想いを告げるのか、自分の中で区切りをつけて諦めるのか。
麗奈関係だけでも結末までにめちゃくちゃ頁数必要そうですがこれ本当に前後編だけでおさまるんですか?3編に分けてくれてもいいんですよ……
久美子以上の新入生
麗奈との関係も含めて結構な勢いで伏線が張られた自分より上手い後輩の出現(短編2巻p.228)。経験者というステータスから一般より上手いレベルに属している自尊心と*9、1番でなければ麗奈に選ばれないかもしれないという恐怖*10。この不穏な描写の連続も鑑みれば、久美子に立ちはだかる壁として不足なしです。
しかし、そんな1年が登場してしまったら2巻をかけて積み上げてきた久石奏という存在があまりにもピエロになる*11。私が奏ならはっきり言ってそんな状況耐えられません、プライドが崩壊して完全に死にます。なのでこの可能性は流石にないでしょう。というかやめてくださいお願いします。
奏も大好きなキャラなのでこの展開はあまり考えたくありません。なので少し別のことを。久美子は美玲の中に自分を見たように、経歴によるアドバンテージが崩れることを恐れています。姉のトロンボーンに憧れて楽器を始め、北宇治入学時にもトロンボーンが好きという思いをもっていたにもかかわらず、積極的に動くことをしませんでした(1巻p.44)*12。
ギクリと心臓が跳ねたのは、自分のなかに思い当たる節があったからだ。経験者としてのステータス。それを、これまで久美子は一度だって手放したことがない。(第二楽章前編p.195)
かたや中学ではホルンだった秀一。ホルンはホルンで好きと言いつつも、北宇治では元々やりたかったトロンボーンへ躊躇せず変更します(1巻p.72)。憧れていた楽器に本気で取り組み、それゆえに当初の練習せず口ばかりだった3年生に対して腹を立て、最終的にはA入りを決める。
超カッコよくないですか!?こんな優良物件早々転がってないですよ久美子さん。
久美子の進路
最大の焦点は音大を目指すのかどうか。特別な麗奈の隣に事もなげに梓が並ぶのを見て、自分も特別を目指す権利がある、対等になる願望を持っていいんだと気付いた久美子(吹奏楽部日誌p.147,168)。この意識変化により演奏技術の向上速度は一層上がったと思われます。麗奈とソロを吹きたい、麗奈に選ばれる自分でありたい。新山先生*13から音大パンフを受け取ったのも確実に音大への意識が芽生えているからと思われます。
別稿で書いたように、音大は麗奈により初期から示され、立華編、第二楽章でも示されたゴールです。しかし、音大はあくまで1つのゴールであって音大=正解ではありません。音大か一般大学かは人生で結構大きめの岐路となります。突き抜けた才能でもない限り、”音大に行ってなにがしたいのか”がなければ軽々に志望するものではないでしょう。すなわち、音大を目指すなら麗奈の隣にいたいの他にもう1つ確固とした理由が出てくる気がします。
世間で噂されている久美子のエンディング。北宇治吹奏楽部の顧問として戻ってくるというのがあります。ここで得たモノを次の世代へ還元したい、とても素敵ですよね。滝先生の背中を見てきているわけですし有力候補じゃないか?と私も思います。
金管vs木管
言われてみるとそうだなと思ったのが、幹部職が金管だらけということ。ここ3年にわたって晴香部長のサックス以外は金管の独占状態です。
- 晴香部長(サックス)、あすか副部長(ユーフォ)
- 優子部長(ペット)、夏紀副部長(ユーフォ)
- 久美子部長(ユーフォ)、秀一副部長(ボーン)、麗奈DM(ペット)
部長としてマクロな問題を裁く立場とすれば金管と木管の対立がテーマとなるのは大いにあり得そう。ソースは忘れてしまいましたが武田先生のインタビューで、金管中心だったから次は木管ののぞみぞをメインにしたと答えていた記憶があります。ならば最後は全部載せだ!金管木管バトルだ!と考えるのは少し単純すぎるでしょうか?
クラリネット、パーカッションの躍進
ホントの話「アンサンブルコンサート」で一気に存在感を増したのが木管のクラリネット部隊。あすかやみぞれが卒業した現北宇治吹奏楽部。ソロでは麗奈が揺るぎない頂点なのは間違いない。しかし1人が突き抜けることとパートとしての総合力はまた別の話です。今まで表に出てこなかった実力派集団。アンコンでは校内オーディション、府大会を勝ち抜いて関西大会へ駒を進めています。
実力性の北宇治において演奏技術=発言力(第二楽章前編p.252)。部員投票で幹部連合を下し最多票を得たクラパートの発言力が強くなるのは間違いありません*14。滝先生の選曲次第では部内に嵐が吹き荒れることでしょう。未だにベールに包まれた彼女らのキャラクター、誓いのフィナーレ注目ポイントの1つです*15。
そしてTV版では田邊名来(ナックル先輩)、大野美代子といった魅力的な先輩方がいたパーカッション。久美子世代にはシンバルちゃんこと井上順菜が在籍しています。原作でパーカスに焦点が当たったのもアンコン編でした。
さて、金管と木管が対立するのであればパーカスは? はい、仲裁役です。金管vs木管を打楽器が止めるという分かりやすい構図が期待できます。さらに、パーカッションには正真正銘のプロ奏者がいることも気になるポイント。木管編リズと青い鳥で新山先生の指導を見せたということは次ははしもっちゃんの出番。橋本先生はコンクール至上主義ではなく、プロらしい感覚の持ち主。
コンクールの評価の仕方って、やっぱり演奏会とは違うやん?きちっと評価ポイントを押さえていくのはもちろん大事なことやし、滝クンはちゃんと細かいところまで気にしてくれる。でもボクはね、そんな結果とか評価ばっかりにこだわってほしくない。結果がどうなろうと、自分たちがやりたいって音楽を貫いてほしい。
ステージに上がった君たちは、もう立派な演奏者であり表現者。まずは自分が音楽を楽しんで、それからお客さんにも楽しんでもらう。そのことを、肝に銘じておいて(第二楽章後編p.256)
その薫陶を一番に受けている順菜たちがどう動くか。金管vs木管ではなかった場合だと、前年の反動から結果主義に走りがちな吹部を引き止める役割を担うことも考えられます。
月永求と源ちゃん先生
月永求と月永源一郎。奇跡を起こした北宇治と、それを上回るミラクルを起こした龍聖。求が龍聖に行かず北宇治に入学したのは明らかに祖父*16を避けてのこと。これだけ思わせぶりな”振り”を描写しているので、求の葛藤が明らかにされることは確定です。
その鍵となるのが求の姉でしょう。緑輝を異常なまでに崇拝する求、その理由の1つに緑輝と姉が似ていることがあるのは間違いありません(第二楽章前編p.266)。入部直後の求は「コントラバスなんて誰が弾いても同じ」という無気力さでした。しかしこれは「(姉以外の)コントラバスなんて誰が弾いても同じ」だったとも推測できます。
この説を採用した場合、今の姉は奏者を引退していてその原因が源一郎にある(と求が考えている)ことが有力に。そして源ちゃん先生はモーレツ型かつ生徒を優先するあまり家庭を顧みない、先生としては素晴らしいが身内としては誉められたものではない人物となります。それゆえに様々な誤解やすれ違いが生じてしまった。
こうなるとキーマンとして一躍候補に躍り出るのが滝先生。滝透という熱血顧問を父親に持った昇少年。学生時代は構ってくれない父に反抗するあまり、「吹奏楽部になんて絶対に入るもんか」とわざわざ学外の楽団に所属しています(3巻p.194-195)。そんな滝先生でも、時間が経過すれば「当時は子供だった、一緒に演奏すればよかった」「父と同じ高校に配属されてうれしい」と感じるまでに変わっています(短編1巻p.236-237、1巻p.274)。この経験が求のわだかまりを解く突破口になるかもしれません。
外れるときは全くかすりもせず豪快に外れそうな予想をしてみました。他には、駅ビルコンサートで龍聖と対バンを張ったりするんじゃないかとか考えたりしています。源ちゃん先生が求や滝先生のためのキャラなのか、久美子の進路に影響を与えるために出てきたキャラなのか*17、興味は尽きません。
緑輝と葉月
あまりにも可愛らしい容姿と性格で覆い隠されて本編中ではあまり触れられませんが、緑輝のスペックはとんでもないですよね。コンバスに関しては高校全一宣言してるも同然なくらいに絶対的な自信を持っています。さらに人間関係の機微にも長けており、知識も豊富。見方によっては麗奈よりも”特別”を体現している存在です。
要は、ほかの学校より自分たちが上手ければいいんですよね! 緑、自分の演奏がほかの学校のコントラバスに負けたって思ったこと一度もないです。少なくとも、北宇治はコントラバスの演奏で負けることはないです。安心してください!(2巻p.30)
この演奏技術を引っ提げて中学時代は3年連続全国金。麗奈ですら持っていない、北宇治の部員が心から欲している栄光を既に手にしているのが緑輝。それでいて(それゆえに)実力主義に凝り固まっていないという、もっとも無敵なキャラクターと言っても過言ではありません。
しかしあまりにも大駒すぎて物語の核心に絡ませるのがとても難しい。凶悪すぎるスタンドで荒木先生の手にも余ったと言われているJOJOのフーゴのように。また、巨大な設定持ちである緑輝を本格参戦させると前後編でおさまる気がしない。残念だけど主題から一筋逸れたポジションを崩すことはないんじゃないかなあと思います。
そんな緑輝の対となるキャラクターが初心者の葉月*18。実力制の北宇治において初心者というのは大きなディスアドバンテージ。劇中でも不遇要素が目立ちます*19。それでも生来の明るさで前向きに取り組み、ついに美玲や麗奈に認められる瞬間が(短編2巻p.265,283)。
なんだかんだ葉月は北宇治カルテットの一員。全国金メンバーとなることを考えれば最終的に大勝利が約束されているとはいえ、実際に報われる場面を見ると胸が熱くなりました。そんな葉月がA入りを果たすオーディション結果発表*20、本人以上に周りが喜んでいる場面を早く見たくて仕方がありません。
田中あすかと魔法のチケット
田中あすかというのはとても難解な人物です。ここで考えても答えは出ないのでそれよりも第二楽章終盤で久美子に渡した魔法のチケットについて。要はこれあれですよね、お宅訪問ってことですよね? お宅訪問ってことはあの人が部屋から出てくるってことですよね? 久美子は生きて帰れるんですか!?
冗談はともかくとして、あすか先輩で一番気になるのは演奏を続けているのかということ。続けてきたことが報われ、ユーフォニアムが好きという思いを再認識した一方で、奏者からは引退しそうな描写があります。
ユーフォ、やめちゃうんですか。浮かんできた言葉を、久美子は無理やり呑み込む。もし仮にそれが彼女の決断だったとしても、久美子に止める資格はないからだ(3巻p.378-379)
チケットが活用されるのは久美子がどうしようもなく追い込まれたとき。立ち上がる切欠があすか先輩のユーフォニアムとなるならば…。
響け! ユーフォニアム!!
あすか先輩と久美子が2人並んで演奏する姿をまた見れるといいなあ*21。
南中カルテットの出番
第二楽章だとあすか先輩の出番ですらほぼなかったので多くを望むのは期待薄。あるとしたら大会直前に激励に訪れるくらいでしょうか。もしくは全国大会後のお祝いの場かもしれません。
でもこれ皆さんも言っているように、出番があるということはその関係性も明らかにされるということ。晴香と葵のように、葵ちゃんは大丈夫だとホッとさせるだけなら良いのですが、あすかと香織のように超弩級の爆弾を投下していく可能性もあります*22。
卒業後の南中カルテット、どんな関係になっているのでしょう。願わくば一生仲良くわちゃわちゃしていてください。
新1年生の活躍
現3年生は酸いも甘いも経験しているツワモノで今更新入生に振り回されるほど柔じゃない。梨々花や奏といった頼もしい2年生もいる。この中で新1年が物語をかき回すのはかなり難易度が高そうです。つまり今回の新キャラは物語にがっつり絡んでくるというよりも、一風変わった性格で低音パートを盛り上げる役目で。
完全妄想で低音に入ってくる新入生とAに選ばれるメンバーを考えるとこんな感じではないかと思っています。
■ユーフォニアム
飛び抜けて上手いわけでも下手でもない、レギュラークラスの1年男子が入ってきそうです。奏と丁々発止のやりとりが出来る愉快な奴だと低音パートの賑やかしとして資格十分。引き続きAは3人体制で。
A編成:久美子、奏、新入生
■チューバ
恐らくチューバに配属される新1年は初心者。過去の自分を思い出しながら指導する葉月、先輩としての役割を喜ぶさっちゃんと、憧れの対象美玲でバランスが良さそう。
A編成:葉月、美玲
■コントラバス
求がメインストーリーに絡みそうな上、緑輝と求の間に入りこむ余地がなさそう。とにかく現メンバーが強力すぎます。今年の新1年の配属はなしで。
A編成:緑輝、求
その他
個人的願望を垂れ流すと、リズでキャラ付けされたフルートパートの活躍が見たい! フルートとオーボエの面々が、希美とみぞれの演奏を思い出す描写とかあるとめちゃくちゃ嬉しいです。
そして2年生にしてパートリーダーを務める梨々花。どうも奏より1枚上手に見えるんですよね。演奏面で突き抜けているわけではないにしても*23、梨々花もかなりの無敵キャラじゃないかという気が。
ということで久美子が引き継ぐ部長、梨々花は結構ありでは? そろそろ木管が天下取ってもおかしくないですしね。↓が私の一押し体制です。夢ちゃんとつみきには是非とも尊敬する先輩の系譜を継いでほしい。
- 部長 :剣崎梨々花
- 副部長:久石奏
- DM :小日向夢
- 会計 :山根つみき
あらすじ読後
あらすじ読んだとき絶対全員思いましたよね、「ヤバい新キャラ来た!」って。いやーまさか転入生がくるとは。完全に思考の外からの襲来にやられました。しかし改めて考えると、このキャラが登場することでパズルが綺麗にはまるように感じます。
黒江真由は全国に名を轟かす清良女子から転入してきたユーフォニアム奏者。腕前は相当なものでしょう。すなわち久美子を脅かすライバルの出現。新キャラ=新入生なので奏を殺してまで出すはずがないと思い込んでいた伏線が完全に消化されます。また、マクロな対立。結果主義の暴走や金管vs木管を考えたりもしてみましたが、全国金を目指す方向で一致している部活が対立にまで至る主因が分かりませんでした。
でも全国金を目指す同士だからこそ生まれる軋轢なら? と考えると強豪校のノウハウを持つこのキャラがぴったり当てはまる。なにせ相手には実際に全国金を獲った実績がある。清良はこうしているという説得力がある。先輩たちから引き継いだ”北宇治のやり方”と”清良のやり方”のぶつかり合い。どちらも恐らく正しい。正しいからこそ対立が生まれる。
この場合、”麗奈がどちらにつくか”ということがかなりの注目ポイントに。そして、麗奈にもない全国金の経験がある緑輝。扱うことが難しそうだったその設定が燦然と輝きだします。黒江真由という黒船襲来により倒れるドミノが本当に多い。凄いキャラ登場させるなあと読む前から感動です。
久美子の唇は凍りついたみたいに動かなかった。私たちは、そういうふうに線を引かれたくないんだよ。ああいう強豪校と、同じように比べられたい。同じ舞台に立ちたいの。むくむくと喉まで湧き上がってきた言葉たちは、しかし結局声にはならなかった(2巻p.133)
かつて久美子は清良女子を別格と呼ぶ母親に対してこんな思いを抱いていました。いつも問題の渦中にはいるけれど、当事者ではなかった久美子。そして満を持して投入される”主人公 黄前久美子の物語”。その成長と、胸を張って堂々と競いあう姿が見られることでしょう。
と、黒江真由が一家言を持った凄い奴前提で書きましたがそんなキャラじゃない可能性も当然あります。例えば虎の威を借る狐のように。実力がないのに清良はこうだったと掻き回すだけの存在であれば、麗奈がサクッと見抜ぬいてワンパンKOしそうです。この場合はあくまで序盤の賑やかしを担うだけで、主題は別の方向から出てきそうです。
逆に、実力はめちゃくちゃ高いのに本人は全然主張をしない人物である可能性もあります。こちらの場合は真由自身がなにをするわけでもなく、勝手に振り回されている側の内面があからさまに浮かび上がってくるのでとても怖い展開です。
それにしても高3になっての転校は理由も気になるところ。もしも滝先生に関係があるなら麗奈のメンタルが心配に。ポンコツ麗奈再びも見てみたいけど、流石に尺の余裕がないかなー。
最後に物凄くどうでもいいことを。北宇治カルテットメンバーである高坂、川島、加藤に続いて登場する名字は黒江。久美子はイニシャルKを集めるサイドエフェクトの持ち主ですね*24。最終楽章が終わるとき、カルテットがクインテットになるまで仲が深まっているのか、競い合うライバルであり続けるのか。黒江真由というキャラクター、要チェックです。
まとめ
上記に挙げたような展開が来ようと全く思いもしなかった展開が来ようと、今現在でも自信を持って言える確かなこと。予想を軽く上回る面白さでぶん殴られる、これだけは間違いない。
決意の最終楽章でいったん本編の幕は下りることとなりますが、ユーフォの世界が終わるわけではありません。武田先生もアイデアがあふれてると言っているように短編集はまだまだ出ると思われます。誓いのフィナーレに続く映像化も期待大です。
なんにせよ前編すら出ていない状態で考えるのはちょっと気が早すぎますね。まずは久美子たちの物語を楽しみに待ちましょう。向かう先はどこなのか、一体どこへたどり着くのか。〆はやはりこの言葉で。
そして、次の曲が始まるのです!
*1:ヒストリエ読者としては「完結に立ち会える事実、なんとすばらしい!」とも感じています。井上雄彦先生のバガボンドはどうなったんでしょう・・・
*2:第二は2年生、再びの先輩後輩騒動、のぞみぞのセカンドバトル的意味などがありそう
*4:2年目の緩みについては第二楽章後編p.342-343参照
*5:シリーズ6冊目なので別の展開をやるはずといったメタ視点でも
*6:パートリーダー達だけでなく、副部長である秀一やDMの麗奈も含まれます
*7:ペットソロ・希美復帰騒動時の言動もそれに基づいていますが、短編1巻「お父さんとお兄さん」では他人の環境について深く考えることなく切り捨てられてしまった描写があります(短編1巻p.232,238)
*8:第二楽章後編p.25-26,178-179
*10:上記と同じく短編2巻p.228
*11:存在自体が罪だと言っていた”下手な先輩”に自分自身が陥るという地獄(第二楽章前編p.366)
*12:高3の今では吹部生活を通してユーフォ大好きと確信を持てていると思います
*13:リズでは希美にパンフを渡さなかったことで線引きの厳しい先生のように見られていますが、原作では相談すれば親身に応えてくれる先生と希美も判断しています(第二楽章後編p.248)。そして原作での希美は新山先生に相談しておらず、新山先生は希美の音大志望を知りません。
*14:そして部員投票だと奏が幹部連合より上の2位なのを見ても、久石奏というキャラを絶望に追い込むとは思えません
*16:最初父と勘違いしてました。ご指摘を受けて修正
*17:こちらも結構ありそうなんです。特に久美子が吹部顧問を目指すのであれば
*18:武田先生は対照的なキャラクターをペアにして動かすことを意識しているそうです。吹奏楽部日誌p.191-192
*19:秀一に振られ、あすかに見放され、美玲にもイラつかれ・・・。頑張れ葉月!
*20:確定事項と言っていい、間違いない
*21:それがあの水道橋ならたまらない
*22:これはけこれで最高
*23:とはいえなかなかに高い技術を持っているようです(第二楽章前編p.385)