傘木希美考察~希美の性格~

傘木希美という人間、勝ち気でイケメンすぎる顔立ちキャラ紹介ページ必見です)も相まって、周りを一顧だにしないゴーイングマイウェイな人物と思われることがあります。久美子も途中までそのような印象を持っていました。希美考察で最初に紹介した久美子の抱いた感想、以下のように続きます。

たくましい二本の足が、自分の最善と信じる道を切り開く。傘木希美とは、初めからそういう人間だった。その道を築くために踏みつけた存在を、彼女は意識すらしていないのだ(第二楽章後編p.207)

この後半部分は意図的なミスリードであり、第二楽章の後半(リズ)においては相手を踏みつけて平気どころか自分で自分を罰しようとしていることが明らかにされます。むしろ各場面を追っていくと、誰かを切り捨てるくらいなら自分が切り捨てられるのを選択する人間にすら見えます。

器用な顔して超不器用、一本気がゆえに複雑。もしかして傘木希美、あまりにも優しすぎるのでは?と感じたので考えてみようと思います。

※南中カルテット以降はリズ後の描写も含みます

 

vs北宇治3年

希美の勝ち気なイメージは、1年でありながら3年生と部の方針で対立しバチバチにやりあったということが大きな割合を占めていると思います。しかし詳細を見ていくと、練習しましょうとお願いする、公平な判断基準でAメンバーを選ぶことを意見する等、あくまで1年の意向を理解してもらうための嘆願レベルに留まっています

そしてこの答えとなる3年の態度は、「うざい1年は無視」かつ「部活だが練習はしない」でした。客観的にはいじめに近いものだったようです(1巻p.243-244)。それでもひたすら交渉を続け、それがどうしようもなく叶わないことが判明し、大量退部事件へと繋がります。相手から踏みつけられても、3年への”攻撃”でやり返すことは最後までしていません

何が何でも我を通して部活を実力制へと切り替えるのであれば、戦略的交渉相手は3年ではありません。1・2年の中でちゃんと練習している人達と、決定権のある顧問らです。真面目な部員と独自に編成を組み、圧倒的実力差を見せつけて我々こそがまともな部活だと顧問や他の先生らと交渉すること*1そっちが無視するならこっちも気にせず勝手にやるよというカウンターです。

退部時の考察でも述べたように、南中部長だった希美は元南中のとりまとめ的立場です。部を割ってでも自分たちの方針を押し通す、その選択肢を取ることが可能な立場にいながら選びません。2年や他の1年を自分たちのグループに誘い入れることも先生陣への働き掛けもせず、部の方針を変えるにはとにかく3年の説得を貫いています。ひたすら不器用です。

実のところ仲間に引き込むということは3年の標的にされることでもある*2ので、意思を示さない(示せない)部員とは故意に一線を引いていた可能性もあります。結局南中グループは、3年の意思が変わらないことおよび3年の意見に反論する部員がいないことを確認した後、理解はできなくとも”北宇治はそういう部活”というのを認識し、自分たちが諦める=退部することで問題に決着をつけました。相手を叩きのめしたり、第三者を巻き込んででも主張を押し通すタイプではないことが分かります。

また、他の南中1年が軽音に移ろうとしたとき、吹奏楽がやりたいので皆で社会人楽団に行こうと誘い返すことも出来たはずです。それをしなかったのもやはり相手の意思決定を尊重しているからだと思います。これはざっくり言うと甘えるのが下手くそ、我儘を言うのが苦手、といった性格分析になるかもしれません。

 

余談1:練習しない3年生

本気でコンクールに向けて取り組む、和気藹々と部活を楽しむ。実際どちらかが正しいというものではないと思います。ただ、南中大量退部事件で個人的に全く理解ができないのは、練習もしない3年がなぜA編成としてコンクールに出場したがるのかです。

確かに晴れ舞台ではあります。しかしコンクールには当然ガチな高校も出場しているわけで、練習しない自分たちがそこに立つというのはそういう学校と比較される、公開処刑されに行くようなものです。私なら怖くて少なくとも自分で納得できる程度には練習するか、本気でやっている連中に任せます。

まあ3年はやたら人数が多かったとのことなので、全員が同じ部門で出るためという単純な理由が一番有力です。ただ、「練習するほうが変」という態度で勝負の場に立つのは失礼な話だなと考えざるを得ません。

南中退部騒動は大きなターニングポイントであるだけに、どうしてもモヤモヤしてしまう問題です。

 

余談2:元南中の先輩

これまで希美グループを元南中でひとくくりにしてきましたけど、実は元南中って2年にも3年にもいるはずなんですよね。劇中の描写からすると東中出身が最大勢力としても希美世代の南中出身は結構な割合で存在していた*3ことから、上級生にも南中出身がそれなりにいたはずです。

そしてその中でも吹部だった先輩たちは中学だと真面目に練習して関西大会で金を獲っているんです。高校の3年間で豹変し、中学時代の後輩に嫌がらせをしだすとも考えにくいので、以下のような状況だったのでしょうか。

■元南中3年(中学関西大会金)
人数だけ無駄に多かったというこの世代、相対的に吹部出身の元南中は少数勢力となります。関西大会で金を獲ったこの先輩たちは、部活の空気に嫌気がさして早いうちに退部してしまったとしか考えられません。

■元南中2年(中学関西大会銀、あすかと同世代)
あすか1年の時点で吹部に失望して辞めた部員も大勢いることが描写されている*4ため、概ね退部済と思われます。香織が言うように退部すら許されず(上級生に逆らえず)残留した部員の中に元南中がいる場合、凄く苦しんで悩んだんじゃないかと思います。もしいるなら誰になるのかは興味深いところです。

高校選択前に南中先輩に北宇治吹部の実態を聞いていればそんな状態の高校に行かなくて済んだのにという話もありそうですけど、まさかここまで酷い有様だとは通常思わないでしょうから詳しく調べない方が普通かなと思います。

そしてこの退部した上級生たちが軽音に移っていたとかだとすると、希美世代の元南中が退部時に軽音に行くと言い出したのもすんなりと繋がります。

 

余談3:高坂麗奈なら?

久美子が抱いた希美の印象、実は初期の麗奈がふさわしいのではないかと感じます*5。だからこそ迷いなくプロを目指せるし、プロ向きの性格ではないかと。そして麗奈なら、本人も述べるように実力で相手を打ち負かしにいく手段を選択したでしょう(2巻p.117)。ソロパートを実力で勝ち取る成功体験を得た直後なので、このような語り口になるのも当然と言えます(退部は逃げだ等、結構過激です)。

しかし以前の北宇治は演奏技術を全く評価の対象としておらず、単に麗奈個人で実力を見せつけても何も響かず終了です。最終的に上手くいくかどうかは顧問をいかに説得するかであり、そのためには仲間を増やす必要があるので、孤高を貫いている入学直後の麗奈にはハードルが高い気もします。逆に実力制での経験しかないため、それが通じないことにカルチャーショックを受けるかもしれません。

そもそも麗奈は滝先生のいない北宇治に来るはずがないし、実力主義が通じない場に出てくる必要もないので、考えても仕方ないことです。ただ、色々経験した2年の麗奈なら退部問題にどう言っただろうかというのは少し気になります。とはいえ高坂麗奈高坂麗奈として、いつまでも無敵感を纏ったまま突き進んでいって欲しいですね。鬼のDM、楽しみです。

 

vs田中あすか

復帰時のあすかとの交渉はとにかく不器用で一本気です。今の実力制が敷かれている北宇治は希美たちの主張を受け入れた部へ切り替わったも同然です。そして部が変わったのは滝先生襲来という外的要因が非常に大きいため、嫌味キャラなら「私たちが正しかったじゃん」と毒を吐いて戻ってくるところです。少なくとも復帰に後ろめたさを感じる必要はありません(だからこそ久美子も能動的に手伝おうとしています)。

しかし希美は生真面目に退部時のあすかとの会話を優先し、売り言葉に買い言葉の約束を守りぬきます。さらに、相談相手は低音窓口としての夏紀だけに絞り、自分の要求に他者を巻き込むことをしません*6

また、交渉に行くのは部活が終わった後、大会本番が近づくと影響がないようにその頻度を減らしています(2巻p.88,245)。”今の自分は部員ではない”という、立場をわきまえた行動を取れる人間だからこそ中学時代にも部長を任されていたのでしょう。復帰を叶えるには紙切れ一枚出せばいいだけという近道があってもあすかが認めないのは自分が部にとって何かマイナスになることがあるはずだと、自分個人の願いよりも全体のことを考えて動いています(2巻p.158)。

社交的で世渡り上手な外見とは裏腹に、非常に義理堅く真正面からの正攻法しか選べない不器用さが浮かび上がります。復帰問題の考察で部外ののぞみぞ接触可能性に考えが至らないのはあすか先輩らしくないと書きましたが、希美の性格を知っているからこそ復帰を認めなければ希美は他の部員との交渉・接触をむしろ避けるだろうとまで考えていたかもしれません(その意味では希美が単純な善意を発揮してしまうみぞれ不調が伝えられたのは結構な誤算かも?)。

 

vs南中カルテット

鎧塚みぞれ

希美の他者を巻き込まない性格を考えるとA編成に選ばれ黙々と練習しているみぞれに声をかけなかったのは当然かもしれません。退部に関する声かけシミュレーションをやると分かりますが、退部側からでは当てつけや嫌がらせになりかねないんです。
※実際声をかけるとみぞれは喜んでついてきたでしょうが、それはみぞれの思いを知っている神の視点で言えるものです。みぞれが部に対してどう思っているかを知らない立場として考える必要があります。

■一緒に退部しようと誘う
これはせっかく選ばれたコンクールに出るのをやめろと強制するも同然です。もしみぞれが出たいと思っている場合は完全に嫌がらせです。この声かけパターンはNGです。

■私たちは退部するからと告げる
退部を告げるからには理由を説明することになります。しかし、ここにいても意味がないから辞めるという理由を言ってしまえば、部に所属する人間に対しては当てつけをしているようなものです。やはりこのパターンも厳しいです。

■そもそものみぞれの意思を確認する
希美たちは公に今の部を変えたいという意思を露わにしています。そのような立場からあなたはどう思っているのかと問うのは同調圧力にもなり得ます。相手の意思を尊重する性格であればあるほど不平不満を表していない人間にこの問いは出来ないでしょう。あすか先輩のように自分が楽器を吹ければ満足だという立場もあるわけですし。

と、考えていくとやっぱり退部側からは難しい。”A編成に選ばれている強い立場”のみぞれ側から意思を示されない限り、優子を通じて伝わる形をとるのが自然に思います。


第二楽章周りに関しては改めて書き出すとひたすら長くなりそうなので結論だけ。多くの考察にあるようにリズの大好きのハグ前は完全に自ら切られに行っています希美はみぞれが音楽に打ち込む姿を知っており、音楽が大好きだからこそみぞれの努力を誰よりも分かっています。その努力に唾を吐くような行為は出来ません。

そして大好きのハグによりみぞれから想いを伝えられた後の話では、キチンとそれを踏まえた行動をします。すなわち、みぞれが断ることを分かっていながら校内アンコンのメンバーに誘うことです。これに出ると音大勉強の邪魔になる可能性があるため、遠慮して誘わないのが一般的です(この考えで優子も誘わない派でした、短編2巻p.233)。しかしこのときは以下の過程を踏んだ後の話です。

「希美は、いつも勝手」
「一昨年だって、勝手に辞めた。私に黙って、勝手に」
(鎧塚みぞれ、第二楽章後編p.302)

一見攻撃的なこの台詞は、みぞれのコミュ能力の低さ(言語選択の不得手)や自らの立ち位置への無関心*7から来るものですが、話して欲しかったということは伝わっています。それをしっかりと受け止めて、迷惑になるかも知れなくても話すことがみぞれにとって重要と判断します。伝えてさえいればそれを考慮した対応をとれる性格の表れと言えるでしょう。

結局のところのぞみぞについてはコミュニケーションが足りていなかったに尽きます。中学のときの大好きのハグ、みぞれが見ているだけでなく想いを伝えていれば一体どのような関係になっていたのでしょう。より近づいていたのか、若すぎるがゆえ受け止めきれず逆に離れたのか、ここも1つの面白いIFだと思います。

 

吉川優子

優子との絡みは大抵優子が希美に怒っているイメージが強いのではないでしょうかw 優子はとても正直な人間で裏表がありません。思ったことをストレートに言葉にします*8。そして怒るのは悪意があるからではなく純粋に守りたい相手を思ってです。希美もその性格を知っているので怒りに怒りで返すことをしないのでしょう。

上記のアンコンでみぞれを誘うことに優子が反対したとき、その声色は久美子が剣呑な気配を感じるくらいに冷ややかなものでした。それに対し最初はぶつかりあいを回避して明るく返し、さらに優子が踏み込んで来るとみぞれの成長を見てやるべきと冷静に諭します(短編2巻p.233-234)。まずは場の雰囲気を壊さないようにしながら結論を示し、相手が納得しないならしっかりと説明しに行く対応です。

場面を遡ってスケジュールを詰めこみすぎた優子部長と夏紀が揉めて*9久美子が不安を覚えたときも、まずは安心させるように状況の説明を、そして麗奈が早とちりして述べた不満にも、笑って謝りながら更なる分析を加えて説明の深化と場の雰囲気を保つことを行っています。この分析はかなり的確で、その後実際に北宇治の組織は変わります

あの二人、大丈夫なのだろうか。不安な感情が顔に出ていたのか、希美が安心させるように久美子の肩を軽く叩いた。 ~中略~

「いや、悪口とかじゃないねんけどさ。有能な人を基準に組織作りしてると、その有能な人間がおらんくなった途端にいろいろとしんどくなるなって話」

「優子先輩は有能やと思いますけど」

無表情のまま、麗奈が不満そうな声をあげる。希美は一瞬目を丸くし、それからへらりと破顔した。「ゴメン、ゴメン」と彼女は両手をこすり合わせる*10

「優子がどうとかじゃなくて、単純にあすか先輩って優秀すぎたからさ。優子がそれを追っかけようとする気持ちもわかるねんな。…ま、夏紀って前から過保護*11なところあるし説教ばっかりになるのも理解できるけど」(第二楽章前編p.282-283)

当事者に聞こえるよう周囲に状況を説明したうえで双方に共感を表し、かつ責め側の夏紀をいじって突っ込ませることで両者を落ち着かせて論争終息に成功。意識的に組み立てたわけではないでしょうが、正確な分析力も含めて調停能力の高さが伺えます

後輩の不安を和らげる気遣い、場の雰囲気を保つ動き、人をしっかりと見た的確な評価。希美が後輩に慕われている、周りに人が集まるというのはこういった性格が寄与していると思われます(”快活なオーラ”の表現もこれからくるものかと)。

久美子に希美と優子2人の組み合わせは珍しいと言われるくらいで、特に優子側が希美のことをどう思っているのかは気になるところです。なんだかんだ信頼しているからこそ気軽に怒れるとかだったら良いですね。

 

中川夏紀

ホントの話の「真昼のイルミネーション」を読んでください、以上。でいいのではないかと思うくらいに夏紀と希美の関係はこの短編に詰まっています。わざわざ2人の関係について語ると蛇足になりそうなので夏紀を通じて見られる希美の性格を結論だけ。めっちゃ前向きで友達思いです!

あと全く関係ないですけどこの話の中のこの一文、ニヤニヤしてしまいます。個人的にはTV1期、1巻の時点では完全に夏紀先輩派だったこともあり誓いのフィナーレも楽しみでたまりません。ゆうなつ、なつかな、なつのぞ、全部最高ですね。

「お、奏が前に言っとったカフェあるやん。ここにしよ」

(短編2巻p.136)

 

希美の性格

まずは強みの面では以下のようになると思います。基本的には明るくて優しい先輩そのものです。久美子にいきなり抱き着く、夏紀の肩に肘を置いて話すなどの距離感の近さもあいまって人気が高いのでしょう(3巻p.105、短編2巻p.243他)。

  • 前向きでポジティブ
  • 友達・後輩思いで自然とフォローを行う
  • 場の雰囲気を明るく保つ”快活なオーラ”を持つ
  • キチンと人を見ていて的確に人となりを評価できる
  • 自分の要求に他者を巻き込まず、相手の意思を尊重する

一方の弱点だとこんな感じでしょうか。強みの裏返しでもあるのですが、他人を巻き込まず自分で処理しようとする、また、甘えるのが下手で周りに強い人間と思われすぎているあまり、袋小路に陥っている場面もあります。希美がもっと我儘を発せる人間だったら生きるのは楽だったんじゃないかなと。

  • とにかく生真面目で不器用、甘えるのが下手
  • 他人を踏みつけてでも自分の意思を押し通すことはできない
  • 負の感情の処理が下手?

負の感情については処理が下手というかそれをあまりにも真面目に直視しすぎる。これは鎧塚みぞれという傘木希美崇拝者の存在が、良くも悪くも希美に普通の人間でいることを許さなかった影響も大きいと思います。通常なら復帰問題は久美子の、進学問題は秀一の言葉で終わりです。

Aとしてコンクールに出してくれと言っているならどうかと思うが、彼女はきちんとその辺りをわきまえている。辞めた部員が戻ってくるなんてことは、高校の部活動ではとくに珍しいことでもないだろう(黄前久美子、2巻p.77)

「志望校変えたんちゃう?よくあることやろ」

「進路なんて一人ひとり別もんやねんから、そりゃ変えるのだって個人の自由やろ」(塚本秀一、第二楽章後編p.94)

希美の”個人の自由”は結構制限されています。弱い存在と認識されるみぞれを優先した行動をすべきという周囲の期待、良き人間でありたいという自身の期待、がんじがらめです。あすかのように、自分の利益のために自身を慕う存在でも切り捨てる悪者を演じられるほど強くもない。そして出てきた結論がこれです。

他人の悪口を言うほうが、自分自身と向き合うよりもずっと楽だ。苦しいことと向き合うには未来はあまりに長いから、理不尽さを誰かにぶつけて解決したと思い込みたくなる。でも、自分がそんな人間になるのは嫌だ。希美は、自分のなかにある醜い部分から目を逸らさない人でありたい。(短編2巻p.136)

いやー高校生ですよ。悟りでも開くつもりでしょうか? 負の感情のない人間なんて存在しないわけで、劇中他キャラもそれを吐き出したり切り捨てながら生きているわけです*12普通に生きるうえでは目を逸らしていいし、そうしている人間が大半ですよ。むしろその方が外面的には良い人間に見える可能性も大きいです。

あまりにも生真面目に直視するという選択肢を選ぶ。このどうしようもなく不器用な性格だからこそ、大勢の方が傘木希美というキャラに心惹かれるのかもしれません

 

職業考察

ここからは妄想全開で。退部時の動きや優子たちとの関係からも、三国志的に言うと希美は乱世の奸雄ではなく治世の能臣であり、変革者ではなく調停者です。本人も言っているように、自分1人のためによりも周りと一緒に頑張る行為のほうが向いた性格だと思います(第二楽章後編p.134)。

みぞれのような楽器しかないという偏執性。麗奈のような周りを吹っ飛ばしてでもの攻撃性。そういった類の”狂気”を持ち合わせていないことからも、プロよりも他に向く性格であるという意見に賛成です。

ということで似合いそうな職業をいくつか。一定のルールが既に定まっている中で、他者との関わりの中に最も力を発揮するタイプと睨んでいます。

 

■音楽教師など
各方面で確立された趣もある傘木先生概念、私も大好きです。希美の長所部分がとても発揮されそうでかなりのハマり職業ではないでしょうか。コンクールも当然結果を目指して一丸全力ですが、結果が望むものでなくてもあんまりそれ自体は引きずってないんですよね*13

「やる気のある子だけ集めて大会に挑んでたら、それで結果が銀でも銅でも納得できたはずや」(北宇治1年時の問題に対して)

「南中最後の年、コンクールの結果が銀でさ。最初はめっちゃ落ち込んでたけど、高校に入るころには結構立ち直っててんな。同じ中学の子らと一緒に、高校でも、全国は無理でも府大会で金賞くらいは目指そうって決めてさ。まあ、北宇治って弱小やけど『うちらが部活を変えてやる!』ってぐらいの意気込みだったわけよ」(2巻p.147-148)

結果至上主義者というよりもどちらかというと橋本先生の考えに近いのかもしれません。そういう意味でも指導者として安心できる気がします。また、目標設定も夢見る少女ではなくかなり現実的です。問題はただの弱小ではなかったことですが・・・。
音楽知識の高さからも音楽教師が一番向いているとは思いますが、この概念の可能性は無限大ですね。様々な創作を楽しみたいものです。

■教会のシスター
完全に悟りでも開くつもりかからの連想です。ちょっと明るすぎるシスターになるのでそんなのいるか?みたいに思いましたがありました、「1ポンドの福音」。結構な高橋留美子好きじゃないと知らなさそうなこの作品、連載が1987-2007年で4巻しか出ていないというのは凄いですねw
実際ここに収まることはなさそうにしても、なんか毎日懺悔に通う音楽プロとかが発生しそうなので少し面白そうだなと。

■警察官
熱血ちゃん的正義感の高さや、人当たりの良さ、調停力を考えるとこれも結構ありなのではないかと思っています。イメージとしては古くは「逮捕しちゃうぞ」、最近だと「ハコヅメ」みたいなところですね。
バイク乗り概念というのもあったように”カッコいい傘木希美”というのが見れそうなので、逮捕的交通課はかなり推しです。

■その他
本当はここの職業妄想を書きたかっただけのはずが無計画に前段を長くしすぎて力尽きました。場をうまく回す司会業(MC、キャスター)、これまでの考察とは全く関係なく趣味を生かした写真家等、妄想は様々に浮かびます。
ここの考察は完全に1つの個人的視点であり、いろいろな解釈や傘木希美像が生み出されていること、そしてそれを読むことをとても楽しんでいます。少しでもいいので再び傘木希美分が得られることを期待しながら誓いのフィナーレを待ちたいと思います。

 

 

 

 

*1:例えば、梨香子先生の方針と対立している松本先生を味方につけるなど

*2:希美たちのグループではなかった夏紀が希美の味方をする暴言を吐いたとき、3年の低音への報復は温厚な後藤がブチ切れるくらいに凄まじかった(2巻p.232)

*3:原作だと退部10人のほとんどが南中+優子夏紀みぞれ=13/27人

*4:低音だけでも3人退部、短編2巻p.42

*5:短編集1巻ヒミツの話「お兄さんとお父さん」の印象が強いからかも?

*6:久美子は自ら申し出たのと、カメラがいないと描写自体見れないので

*7:退部騒動時はAメンバー、リズ時は新山先生から才能の保証を得た立場と、実際に強い立場にいるのは常にみぞれ側です。ただ、みぞれの評価基準は希美なので本人には認識できません

*8:これが一種のカリスマ性を生んでいるのではないかと思います

*9:「うちがあすか先輩に劣ってるって?」「少なくとも脳味噌の容量は半分以下でしょ。冷静に自分のキャパ考えてみ?」、うーんなかよし川

*10:純粋に優子をかばおうとしての不満であるため、謝ることで麗奈を立ててから次のステップに入ります

*11:この過保護については、後に優子自身が夏紀をそう評しています(第二楽章後編p.213)

*12:そういう意味でも久美子は負の感情との付き合い方がとても上手いなと思います、短編2巻p.228-229など

*13:退部・復帰問題とそれ以上に大変なことがあって引きずる暇がなかったかも?南中銀はどちらかというと優子やみぞれの方が引きずっている感もあります(2巻p.213,310等)