決意の最終楽章感想~久美子と真由、そして奏~

響け!ユーフォニアム本編完結おめでとうございます!!

大好きなタイトルの結末を見届けられるのは幸せなことです。武田綾乃先生、本当にありがとうございます。ということで最終楽章前編後編まとめての感想を。似たような感想は既に一杯あると思います。それでも1つでも多く作者へ感謝の意を示したいので。

さて、最終楽章を読み終わった人は皆がみんな黒江真由、久石奏に関して一家言持っていて、色々な人の感想とそれを突き合わせたい感情が湧いていると思います。当然ながら私もそうなので特にその2人を中心に。

 

 

全日本吹奏楽コンクール

全国金おめでとーーー!

ド直球で来てくれてホッとしました。北宇治高校吹奏楽部に関わる人間全てが報われる結果。全国金が獲れなかったら凄くモヤモヤが残る結末になったのではないかと思います。努力は望む形で報われるとは限らないといえどもとにかくこれは最終巻。やっぱり物語はハッピーエンドがいいよ

とはいえこれかなりの紙一重ですよね。特に誓いのフィナーレの奏を見た後だと「結果が良かったからですよ」の台詞(要約)がチラつきます。もし全国ソロで真由が選ばれていたら? 金じゃなかったら? 久美子や吹部の面々は本当に納得できたのだろうか。しかしそれについては劇中にひとつの答えがあります。

いくつもの「もしかして」を抱えながら、一年間を過ごしてきた。でも、きっとそんな仮定は初めから意味ないのだ。久美子は吹奏楽部に入り、部長となり、そして北宇治は全国大会出場を決めた。最善の未来をつかむための選択を、自分たちは重ねてきたはずだ(最終楽章後編p.325)

久美子の視点としては努力して、全力を出して、いい結果が出た。もはや〇〇だったらの仮定は不要。このハッピーエンドは結果論かもしれないけれど、そもそも結果論じゃないハッピーエンドなんて存在しないのでは? とも思います*1

久美子視点と読者視点での違いと頭で理解できてもなんだかんだ残るものがある結末かもしれません。それだけに他キャラの視点からの北宇治吹部はどうだったのかを見てみたい。短編集で出ないでしょうか。ボタンでキャラクター変更してこのキャラからはこう見えてたんだ! みたいなの欲しいです。

 

黄前久美子

当事者と傍観者

来ましたねー、久美子自身が当事者となっての問題発生。少年漫画で良くあるのが、これまでの経験が糧となってクライマックスで主人公を後押しをしてくれるというもの*2。それに対して最終楽章で久美子に訪れたのは、これまで当事者の隣にいて関わってきた問題が束となって久美子自身に降り注ぐこと

この問題は既に経験している、だから乗り越えられる。ではなく、いざ当事者となると横から口出ししていたことが全くできずに動けない。最終楽章の久美子はソロ騒動における香織であり、第二楽章における希美であり、自らの気持ちを押し込めていた奏やあすかです。

  • 聞いたらあかんの?(加藤葉月
  • 逆に、久美子ちゃんの本音はどうなの?(黒江真由)
  • 自分の気持ちにもう少し素直になってもいいと思うな(川島緑輝
  • 私はむしろ、久美子先輩がどうしたいのかを聞きたいです(久石奏)
  • 結局さぁ、久美子ちゃんはどうしたいの?(田中あすか

並べてみると本音をしゃべれ久美子! と怒涛のラッシュ。武田先生はキャラクターの立ち位置による見え方の違い、立場の変化に伴う気持ちの変化を描くのが凄く上手いなと思っていて*3、当事者になった久美子が本音を出せずにがんじがらめになるところが前編から丁寧に積み上げられています。これまで久美子から突っ込まれてた当事者たちも大変だったんですよ、ほんと。

それにしても久美子個人の評価、めっちゃ高かったですね! 真由派と久美子派で分かれてると言いながら下級生はほとんど久美子派じゃないかって勢いで。特に1年生の義井沙里とは完全に退部を引き止めた香織と引き止められた優子の関係。最終楽章はさながらサスペンス、ミステリーのような組立ではらはらしました。この引用部分だけでも情報量が多い!

私、何があっても久美子先輩を応援しますから
大げさな、と茶化すには沙里の態度は真剣すぎた。意図的に口角を上げ、久美子は微笑を作る。余裕のある先輩に見えるように。
「ありがとう。嬉しいよ」(最終楽章後編p.22)

 

久美子の進路

麗奈や梓から音大勧められまくったわりに久美子にその気が全然ないのにはちょっと笑いました。新山先生もみぞれに言われたからパンフレット渡しただけでそれ以上でも以下でもないんかいと*4。とはいえ前年の希美とみぞれを見ていればそうなるのも当たり前なのかもしれません。高三の夏になるともはや夢見る少女じゃいられない*5この引用部分、少し希美が重なります

もっと正確に言うならば、選べない、だ。久美子には音大に行くだけの覚悟も、経済力も、それらすべてを上回る飛び抜けた才能もないユーフォニアムは好きだ。みんなと演奏する時間も、もちろん楽しい。だが、それを職業にして生きていくほどの気概はない(最終楽章前編p.296)

前編プロローグで明らかにされたド本命の吹部(副)顧問路線。滝先生の影響で顧問・教師になりたいという路線はぼんやりと分かっていても、「私は、先生みたいな人になりたいです」と本人に告げるまでになるとは思っていませんでした。最終楽章の滝先生はとにかく疑われまくりです。美玲や奏から、秀一から、そして久美子自身から。しかしこれも滝先生が絶対的な神域ではなく、彼もまた迷いながら進む人であると理解できたからこそ目指すべき姿へと認識が深化したのでしょう。

最終楽章で完全に盲点だったのがこの滝先生への不信。私も美玲の台詞があるまでアンタッチャブルな存在と勝手に分類していて、これまでの実績、結果を出したということからの信頼感は人を盲目にさせるとハッとさせられた気分です。改めて1巻を読み直すとあまりの粘着イケメン悪魔っぷりに苦笑い。滝先生は滝先生で1人の人間として生きてるんですよねえ。

そして久美子が北宇治の副顧問になったということは他の高校とコンクールで競うということで。そこに希美の率いる高校があったらどうかというお話を目にしてその展開とてもいいなあと。希美の南中から久美子の北宇治へバトンを繋ぐってパターンも好きです。響け!第二幕は考えるだけで楽しい

 

黒江真由

わっかんねー! わかるけどわっかんねー!! はい、この人は分かりません。分かる部分は分かるけどそれで完全に理解できたかというとそうじゃない。まさしく”つかみどころがない”人物。ただなんでしょう、寂しげな人だなという感じがします。

真由は自分が入ることで相手の楽しいが崩れないかをめちゃくちゃ気にしてますよね。オーディションでも、写真撮影でも、自分が加わることが相手にとって良いことなのかをまず確認しようとしています。一方で自分の楽しいの範囲をキチンと把握していて、楽しくないことに対しては結構辛口。以下の引用も一見矛盾しているようで筋は通っていて、相手が怒ろうとも自分の意見を強烈に示します。

合奏するなら上手な方が楽しいでしょう? いくら自分が参加してるって言っても、合奏時間に下手な演奏をずっと聞かされるのって嫌だなぁって思っちゃう(最終楽章前編p.100)

私にとって部活って、いまみたいに友達と一緒にいて、楽しい時間を過ごすためのものなの。 ~中略~
私にとってコンクールは、吹奏楽部で過ごす時間についてくるおまけみたいなものなの。こんなこと言うとみんな怒るんだけど、本当にこだわりがないんだよ(最終楽章後編p.275)

あすかと久美子の会話では”能力があるのに他人へ委ねたがるタイプ”という分類でみぞれと希美の関係を思い起こさせます。しかし読み返しているうちに、真由は委ねているのではなく条件提示に対しての回答を求めているだけで、実は単なる超シンプル論理的思考なのでは? という気がしてきました。

自分の手札を晒して「私の楽しいはこれだ、あなたの楽しいを教えてくれ。Win-Winとなる妥協点を探ろうじゃないか」と言っているだけ。自分の楽しいの邪魔はされたくない。そして相手の楽しいの邪魔もしたくない。これが全てなんじゃないかと。

北宇治のルールだから、公平じゃないから、間違ってるから。なるほど一般論や部長としての役割は分かった凄いと思う。でも久美子個人の楽しいはなに? をずっと聞きたかったし聞いていた。だから最後の演説は真由に届いたと思います*6。悔しいも自分のものだそれを邪魔するなと自らの領域を示したわけですから。

部活のためを思ってとか、誰かのためを思ってとか、そんなのは知らない。私は、いま、百パーセントの力を出し切りたい。メンバーになれなかった、ソロを吹けなかった。そうやって、悔しい思いをする子が出てくるかもしれない。でも、その悔しさはその子のもので、誰かにそれを奪う権利なんてない(最終楽章後編p.326)

人間だれしも裏表があり、久美子はその裏の部分を突くことに長けていました。裏の部分、本音を引きずり出しそれと対話することで信頼を得てきたのが久美子です。ところが真由はその裏表が極端に小さい。真由の裏を読もうとすると自分の考えが反射してきて自らの裏に縛られる。本音を出せないのが久美子となる自縄自縛。つばめが真由と仲が良いのは、言動の裏を考えないタイプだからかもしれません*7

真由が裏表なく直球勝負を仕掛けるのは、非効率的なことが嫌いだからではないかと思います。個人的感覚だとこういう人間は結構な面倒くさがり屋。そんなことを考えながら前編を読み直しているとこんなやりとりを再発見して思わずあるじゃん! と叫んでしまいました。ズボラは極まると超効率的人間になります*8

「練習着は自由なんだから、ジャージとTシャツでもいいのに」
「今日は体育があったし、荷物が増えるのが嫌だから」
意外と合理的だよね真由ちゃんって
そうかな。どっちかっていうとズボラなの
(最終楽章前編p.139)

もし真由のことを気に入らないと対立してくる相手がいても真由は反撃することなくただ黙って去りそう。分かろうとする気のない相手と喧嘩することほど無駄な時間はないので。裏表なく条件提示して領域を確認する、無駄なことには立ち入らない。良くも悪くも深入りをしない人間に見えます。これは転校が多かったことで身についた所作なのかもしれません。

今作のテーマは居場所と拠り所。自分の思いをぶつけた久美子、握手を交わすまでになった奏、写真で全員を結んだ佳穂。卒業するときには北宇治ユーフォパートは1つの大きな居場所だったなと思うまでになっていてくれれば嬉しいです。

最後にめちゃくちゃどうでもいい話をすると、効率厨である真由はMMORPGに向いていますね。にっこり微笑みながら「動き理解した?」とかチャット打ちやがりますよこの人。あと、言葉の裏でのユーモアを楽しむ文化の京都を舞台にした物語で裏表のない真由をラスボスとしてぶつけてきたのは面白いなと思いました*9。といっても純粋に裏表がないわけではなく、裏表をなくすことが習慣づいているタイプ*10。今のところこれが私の中の黒江真由像です。


好き勝手に想像してみましたけど最初に述べた通りつかみどころがなくてこの真由像はかすっているのか大外れなのかさっぱり分かりません。真由については短編集で補ってくれると勝手に信じています。
武田先生、清良時代の真由を書いてくれますよね!? 

 

久石奏

久石奏はかわいい。そして賢くて強い。とても強い。夏紀や久美子への態度でちょろかわいいとも言われる奏。奏が可愛いことに異論は全くないどころか全力肯定ですが個人的に好きなのは理性とその強さ。

意識と感情のズレが大きい箇所って基本的にその人の弱部で、そこをこれでもかと突かれていたのが1年での奏。必然的に弱く見えます。逆に意識と感情が一致してる人間はとても強くて、知力・能力で上回る相手を時には容易になぎ倒します*11ジコ坊の言う「馬鹿には勝てん」ってやつです。

そして誓いのフィナーレ公開前日の武田先生のtweetは奏の感情にさらに深みを与えてくれます。全くとんでもないものをサラッと投下してくれたもんだ。

 
自分を救ってくれた北宇治吹部と先輩たち。2年の奏は意識と感情を分離させる必要がなくなったためその賢さがフルで発揮されています。北宇治のルールから逸脱している、久美子先輩の居場所を乗っ取りかねない、自分の大好きを脅かす真由には警戒心を抱かざるを得ない。一方で北宇治の象徴である滝先生に迷いが見える、肝心の久美子先輩が煮え切らない。聡いがゆえすべて見えてしまっている。最終楽章の状況を最ももどかしく感じ、久美子が久美子のために行った演説を一番聞きたかったのは奏だったのではないでしょうか

久美子先輩は、部長になってから嘘が上手になられましたね
「嘘じゃないよ」
「そうですか。では、そういうことにしておいてあげます」
(最終楽章後編p.227)

前編読了直後は久美子好きが暴走して部をかき乱す存在にならないか危惧しましたが完全に杞憂でした。久石奏は私が思っているよりもずっと賢くて強かったです。自負しているように冷静に判断できる性格、梨々花とともに次代の北宇治吹部を素敵に率いてくれるのは間違いありません。

そしてその梨々花も1年でみぞれとはコンクールに出ることが叶わなかった過去があります。問題解決は本人に任せるほかないにしろ、横にいて励ますこと、それすら出来ない立場である自分がどれほど悔しかったことか。同じ経験を持つもの同士だからこそ通じるものもあったでしょうし、奏にとって梨々花がいたことはかなり救いになったんじゃないかなあと思います

梨々花と奏って本当にいいコンビで2人とも言葉の表も裏も楽しんでいます。京都人らしいユーモア持ちと言えるかもしれません。その意味でも裏を作ろうとしない真由と奏はまさに水と油。でも奏と真由ってベクトルは逆ながらとても似ている部分もあってそれが面白いところ。特に”可愛さを具現化したような容貌をしている真由”*12という表現、武田先生のtweetを見ていると大変興味深い。オーディション辞退も可愛いも別のアプローチを経て同じところに辿り着く、そりゃあ奏からするとぞわぞわしますよ。

で、改めて見直すと可愛さの凝縮と具現化が並んでいるのが前編の表紙。この久石奏最高にかわいい。アサダニッキ先生の描く可愛いキャラの中でもNo.1じゃないかと思うくらいです。これは本文中から着想を得たものだと思いますが奏の心情をとてもよく表していて、特徴を把握したうえでイラストに落とし込んでくれるのって1読者、ファンとしてめちゃくちゃ嬉しいこれなんかもう最強

一瞬、奏のスニーカーがザッと地面にこすれる音がした。久美子の体躯に身を隠し、奏は上半身だけを真由へとのぞかせる(最終楽章前編p.143)

イラストが素敵すぎて話が逸れました。北宇治の百パーセントを出すために真由が全力を尽くし、久美子先輩に念願の全国金賞を贈ることが出来た。この時点で奏の真由に対する思いは感謝の方が強くなったのではないかという気がします。奏が久美子のために久美子の隣でやりたかったこと、それを誰よりも上手にやってくれたのが真由だからこその無言の握手。真由のことを一番認めているのは奏なのかもしれません

『隣に私がいなくて大丈夫です?』(最終楽章後編p.355)


■次代の旗手として

関西代表は全国金の常連。北宇治も今回の結果で押しも押されもせぬ強豪校の仲間入り。とはいえまだまだ新興勢力で立華のような一本芯の通った気風や伝統はありません。晴香-優子-久美子時代でもそれぞれ部の雰囲気は異なり大きく揺れ動いています。頂に辿り着いた北宇治、がむしゃらに登るだけの時代は終わりました。強豪校として迎えるこれからの北宇治は奏たちにかかっています*13

ここ3年間はなんだかんだ高坂麗奈という主張の大きいスーパーエースが引っ張ってきた面がかなりあります。その麗奈がいなくなりいよいよ個人から集団へ、エースが引っ張らずとも自然と全体が向く方向性。北宇治高校吹奏楽部とはに答える共通認識。この土台造りには梨々花、奏ともに”Bを経験したことがある”というのが大きな強みになると思います。 

だけど、きっとそれでいいんだよね。みんなが違うことを考えてても、同じ方向を向いていれば(最終楽章後編p.315)

後編プロローグの北宇治スローガンは「音を楽しめ!」でした。そこへとたどり着く紆余曲折の第一歩が始まるのでしょう。と、いうことで最終楽章も踏まえての私のおすすめ次世代人事を。

  • 部長 :剣崎梨々花
  • 副部長:久石奏
  • DM :小日向夢
  • 会計 :山根つみき*14

はい、以前挙げたものと全く同じです。やはりこの部長副部長は鉄板。逆パターンもありですが、奏が2年でBだったのと奏自身参謀タイプかなと。そしてDMには美玲がピッタリと私も思っていますがあえて夢に。美玲ってホント優秀で理知的かつ周りが良く見えていて、さらに本来の意味でのDMをやるときはそのビジュアルが映えまくること間違いなし。ただ、周りに目が届き過ぎてDMにしても役割以上の仕事をしようとするんじゃないかなあと。役職に就けずフリーな1プレイヤーにしておいた方が本領を発揮できるのではと思いました*15

あえて夢を推す理由はもちろん麗奈の期待に応えて*16その系譜を受け継いでほしいからというのと、どこまで伸びる素材なのかが楽しみだから。最終楽章ではあまり出番がなくても、出てくると随所に成長を感じさせています。元々なかなかに図太い面も見せていた夢、加部ちゃん先輩の想いものせて大きく羽ばたいてほしい。


奏に話を戻してまとめます。久石奏はかわいい! 以上!!

 

短編集への期待

既に制作が発表されている短編集。北宇治吹奏楽部の〇〇〇の話に今回当てはまるのは何でしょうか。ナイショの話だとヒミツと被るしイツモ、コンゴインパクトが薄い。それなりにしっくりくるのは「ミライの話」だけどちょっと壮大すぎる? 短編集で武田先生が一番悩むのは実はタイトルかも。この短編集、気になることがあまりにも多すぎるので何冊でも続けていただきたいところですが、その中でも特に読みたい題材をピックアップしてみます。

北宇治カルテット卒業式
これはもう100%ですね。卒業式をやらずにユーフォを終わらせられるわけがない。ペットからユーフォへの手紙が再び発生することはもはや確定情報のように取りざたされています。1年をともにした黒江真由との関係は、久美子先輩卒業に当たっての久石奏の感情は、そして秀一は。本編の対となるもう一つの正式なエンディング、楽しみで仕方ない。

■黒江真由清良編
上でも書いたように黒江真由を理解するために絶対必要でしょう? 立華とはまた違う文化を持つであろう強豪校といった意味でも読みたい。なにかとんでもないものが飛び出てきそうでもあり怖いもの見たさなところも。どんな話になるのかこれに関しては全く想像がつかないのでむしろ一番気になるものかもしれません。

■次世代北宇治吹奏楽
これまた奏のところで書きましたがやっぱり見たい次世代の活躍。最高学年となり新入生から憧れの先輩として認識される立場となった梨々花世代。たかが2歳差なれど高校の1年と3年ってなんかもう全然違うんですよね。立華の瀬崎未来先輩のようにカッコよく輝く梨々花や奏をお願いします!

川島緑輝と月永求
最終楽章は完全に久美子視点だったこともあり、全てが語られないままの物語も結構あります。そのうちの1つがこの師弟関係。ていうか緑輝ちゃん、求から来られたらかなり脈ありなんじゃないですか!? 吹奏楽マニアの緑輝なら確実に来年のコンクールの応援に来るはず。そこには成長期で一気に背が伸びて他校の生徒にキャーキャー言われている求がいるかもしれません。それでも相変わらず求は緑輝一筋でしょう。自分にはもったいないとかごちゃごちゃ悩んでないでGoだGo。

■あすか先輩のユーフォニアム
3巻のエンディングからひたすら気になっているあすか先輩が奏者を続けているのかどうか問題。田中あすかと銀のユーフォの組み合わせってこのシリーズの読者にとっては象徴的なものの1つだと思うんです。いつかまたあすか先輩がユーフォを吹く話、何気ないものでもいいから読みたいなと。
あと、北宇治ユーフォパートのテーマ曲となった「響け!ユーフォニアム」。あすか先輩は直接出てこなくともこれが連綿と引き継がれていく話も欲しいです。まずは久美子、真由、奏、佳穂の4人で吹いている描写をなにとぞ。

■麗奈が久美子に電話してるだけ
最後はかなり適当ですがなんかありそうだなーみたいなシチュエーションを。アメリカに進学した麗奈がただ単に久美子に電話してるだけ。お互いの近況を報告して笑い合うだけのたわいない日常。短編集らしい平和で少し気の抜けたようなお話。距離が離れれば付き合いも薄くなっていくものですが麗奈と久美子ならどちらからともなく連絡し、話し出せばすっと高校時代に戻る関係を続けてくれる安心感があります。

 

おまけ

麗奈は今回損な役回りだったなー、でも久美子に甘えまくりだなーとか、求の「僕は北宇治の人間です」はシビれた! とか感想は他にも書ききれないほど色々ありますがなんと言っても南中カルテット。すみません、こんなに出番あるとは全く予想していませんでした。情報過多です。しかもあくまで久美子視点なので心情については完全に読者に委ねられた状態。くはー。

この描写はこういうことか? この台詞はこういうことか? 考えはぐるぐる巡りますが全く答えは与えられていない。この部分に関する感想は書き始めるとひたすら長くなりそうな上、とにかく固まらないので改めて別稿で。久美子へのものだけど希美へ言っても当てはまるんじゃないかなあというものを参考に引用しておきます。

やりたいことなんて見つからんくてもさ、何かを続けてたら意外とそれがやりたいことに変わっていくこともあるかもよ(佐々木梓、最終楽章前編p.270) 

人生なんてものは、設計図通りにはいかないものだ(松本美知恵、最終楽章前編p.341)

 

kasakin.hatenablog.com

 

*1:失敗は成功のもとの言葉も成功という結果が出てこそですよね。さらに秀大のあかりちゃんの場合だと1年では自分のミスで関西敗退、2年でリベンジ全国進出、しかし3年では再び関西ダメ金。どの時点までとするかでもハッピーエンドと言えるかは変わります

*2:主人公の背後に現れる人々描写みたいなあれです

*3:君と漕ぐ2でも恐らくこの変化関係がどっぷりと書かれるの間違いないのでめちゃくちゃ楽しみにしてます

*4:相談したら親身に相談に乗るという受け身姿勢が基本で、その新山先生が能動的に動きたくなるくらいみぞれの才能が異常だったんでしょうね

*5:はい、言ってみたかっただけです。むしろ夢を探している感じですね久美子

*6:刺した、ではなく

*7:一方で緑輝は真由に裏がないことをしっかり把握したうえで仲良くなってる感じ

*8:もしかして私服が残念な真由概念もありえる?とヒントを得るためにプール回読み直しましたがなんと真由の水着に対する久美子の観察描写が淡泊! わからん、これじゃなにも分からん!!

*9:宇治は洛中じゃないですって? しらーん!!

*10:そして合理的・論理的人間、現国と数学が得意なタイプかもです

*11:なんせあすかを倒したんだもんね(中世古香織、最終楽章後編p.309)

*12:最終楽章後編p.283

*13:前年度は金、今年も全国進出した龍聖学園の結果がどうだったのかも気になります

*14:原作未登場、完全にリズの影響からの希望です。短編集での逆輸入をぜひともお願いしたい!

*15:狙った通りの質問をしてくれて、それに対して奏が答えるといった感じになりそうなのも全体をまとめるのにやりやすそうです

*16:今年決めたことが来年、再来年まで影響するとしっかり先を考えていた麗奈はやっぱり賢いな、そして本気で滝先生LOVEだなと思います(最終楽章前編p.87)